記者が取材対象者を取り囲んで行う、いわゆる“ぶら下がり取材”。しかし総理大臣に質問する記者を見て、「突っ込みが足りないなあ」「ピントを外した質問をするなあ」と感じたことがある人もいるだろう。なぜ彼らは、迫力に欠けた質問をするのだろうか。この問題について、政治ジャーナリストの上杉隆氏、作家/経済ジャーナリストの相場英雄氏、ノンフィクションライターの窪田順生氏が語り合った。
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相場:大手新聞社のトップを見てみると、全員が記者出身(関連記事)。ボクの先輩は組合の幹部団交の席で、このように言っていました。「経営をアウトソーシングをしろ」と。この発言は組合報に掲載されていましたが、「その通り」だなと思いましたね。
上杉:そもそも経営と編集は分離されていないといけないのに、日本の多くのメディアは元記者が経営を行っている。記者が経営を行うということは、サッカー選手が現役を引退して、プロ野球の監督をするようなもの。おかしな話なのに、それがまかり通っている。
窪田:昔から政治部出身の記者が、経営に携わるケースが多いですよね。なぜ政治に少し詳しいだけで、経営を行うことができるのでしょうか。
相場:ただ社内でも「オレは管理職にはならない」「オレは記者一筋でやっていく」という人がいます。しかしこうした発言は社内でものすごい軋轢を生むんですよ。多くの人は管理職をやって、部下のヘタな原稿をチェックしなければいけない。なのに「あいつは何だ!」「我がままばかり言いやがって!」と批判されるわけですよ。
上杉:それこそ官僚体質ですよね。記者というのは専門分野を長く取材することで、権力を監視することができる。しかし日本では1年生記者が、総理大臣にブラ下がったりする。政治家側からすれば、彼らの取材なんておちゃのこさいさいですよ。
窪田:自分の息子くらいの年齢の記者が「どうですか?」と聞かれても、鼻であしらうだけでしょうね。
上杉:例えば自分の会社で行った世論調査について、総理にこのような聞き方をしていますよね。「総理、支持率が○○%になりました。受け止めを?」と。
窪田:そんな質問は、新橋のSL広場でサラリーマンにやればいいんですよ(笑)。
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