第38鉄 夏の青春18きっぷ旅(2)吾妻線、噂の現場を歩く杉山淳一の+R Style(2/6 ページ)

» 2010年09月17日 21時08分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 一番列車に乗った理由は、吾妻線の運行本数が少ないから。途中下車して見物するなら、なるべく早めに現地入りしないと日帰りは不可能なのだ。そしてもう1つの理由は、高崎駅で販売される幻の駅弁、「上州の朝がゆ」を食べるため。おかゆの駅弁が買えるのはおそらく全国でここだけでだろう。朝だけ販売、しかも数量限定なので、日中の旅行者はまずお目にかかれない。だから幻の駅弁というわけだ。午前7時、改札の外で開いたばかりの駅弁屋さんで入手できた。

 吾妻線は上越線の渋川から分岐する路線だ。しかしほとんどの列車は上越線に乗り入れて高崎駅から発着する。次の吾妻線の列車は07時25分。駅弁は列車内で食べたいけれど、発車を待ちきれずにホームのベンチでいただいた。なにしろ出来たてのおかゆだから、時間をおけば冷めてしまう。箱を開くと発泡スチロールの容器におかゆ。栗と干しエビが載っているだけのシンプルな内容。小さなパックには梅ペーストと漬物と塩の小袋が入っている。まずはおかゆを頂く。エビの旨味がほんのりとご飯に移っている。そしておかゆに温められた栗の甘さも楽しい。栗とエビがなくなったところで梅ペーストを混ぜて、最後に塩を振りかける。よく見ると、おかゆにはシラスも炊き込んであって良い味。これで350円とは良心的だ。

高崎駅の隠れた名物駅弁「上州の朝がゆ」

車窓から関東平野の境界を探そう

 高崎から渋川までの車窓が楽しい。そろそろ関東平野の北限で、遠くに山並みが見えてくる。車窓右側は、平野と空の間に、ちょっと霞んだ赤城山が横たわる。反対側、左の車窓に視点を変えると榛名山へと続く山たちだ。渋川から吾妻線に入ると、どんどん山が迫ってきて、広大な関東平野の端になる。

上越線から榛名山を望む

 吾妻線の運行回数はだいたい1時間に1本。日中の普通列車はほとんど長野原草津口駅で折り返し。午後は終点の1つ手前の万座・鹿沢口まで行くのだが、大前行きは4往復しかない。もちろん単線で、閑散としたローカル線という印象だ。しかし沿線には温泉が多く、上野から万座・鹿沢口行きの特急「草津」が乗り入れる。今回は青春18きっぷの旅だから、地元の人々と同じ普通列車で旅をする。朝の下り列車にも関わらず、地元の人々で満席。温泉地への通勤や、中学や高校へ通う若い人が多い。女学生のおしゃべりで賑やかだ。

こちらは赤城山
吾妻線は湘南色の115系。旅の気分が盛り上がる

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