第38鉄 夏の青春18きっぷ旅(2)吾妻線、噂の現場を歩く杉山淳一の+R Style(3/6 ページ)

» 2010年09月17日 21時08分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 渋川から2つめ、金島駅の停車時間はちょっと長い。すれ違いの列車を待つからだ。後ろの席の女学生たちが歓声を上げる。反対側のホームに友達を見つけたようだ。彼女もこちらに気づいたようで、手を振っている。その娘がハッとするような美少女だった。もうすこし見ていたいと思っていたのに、上り列車に視野をふさがれてしまった。

 平野のフチってどんな様子なんだろう。車窓を眺めていると、ホームセンターを通り過ぎたあたりで水田が終わり、むくりと小山が並び始める。よ〜し、ここを関東平野のフチに決定! 平野と山岳の境界は森林があったりして曖昧なところが多いけれど、吾妻線は見事に「平野の端っこ」を見せてくれた。

勝手ながら、ここを関東平野の端っこと認定(笑)

吾妻川に沿う車窓の美しさ

 次の祖母島(うばじま)駅を過ぎ、トンネルを越えたら左側に席を移そう。ここから列車は吾妻川に沿って進む。吾妻川は利根川の支流で、群馬県と長野県の境に水源がある。曲がりくねった川で、線路に寄り添ったり離れたりを繰り返す。川幅が狭い谷川のため、水量が増大した場合は急流となって災害になると懸念された。そこでこの地に国家的事業「八ツ場ダム(やんばダム)」が立案された。

吾妻線では車窓左側がオススメ

 岩島駅を過ぎると左手に真っ白なコンクリートの建造物が見える。これは吾妻線の新ルートの橋げただ。八ツ場ダムの建設に伴って、川原湯温泉駅付近が水没する予定のため、岩島駅から長野原草津口駅までのルートを変更する。その工事が着々と進んでいる。長野原温泉口駅の手前にも新しいコンクリート橋が見えた。八ツ場ダムは2009年の政権交代で話題になった「政争の地」。新政権が税金の無駄遣いだと工事中止を決めたところである。これに対して住民が反発していることも報じられた。ダム工事自体は中止されているけれど、付帯設備の鉄道と道路の工事は続いているという。

 私はただの乗り鉄であって、政治を語る知恵もないし勉強もしていない。だからダム建設の是非については何も言えない。しかし、線路が付け替えられるとなれば無視できない。今の姿を見ておきたいし、新ルートがどうなるかも知っておきたい。そこで、八ツ場ダム事業の広報施設「やんば館」を訪ねることにした。Webサイトの略地図などによると、「やんば館」の位置は長野原草津口駅と川原湯温泉駅のちょうど中間地点らしい。両駅の鉄道営業距離は5.9km。さてどうしよう。酷暑の夏、ここまで来ても気温は30度を超えていた。

吾妻線新ルートの工事は進んでいる
こちらは長野原草津口側の新橋

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