「日本はベンチャーに冷たい」「ベンチャー企業は弱者だ」といった声を耳にすることがあるが、本当にそうなのだろうか。ベンチャービジネスを取り巻く問題点などを、公認会計士の磯崎哲也さんと正体を明かさないブロガーのちきりんさんが語り合った。
1984年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。長銀総合研究所で、経営戦略・新規事業・システムなどの経営コンサルタント、インターネット産業のアナリストとして勤務。その後、1998年カブドットコム証券株式会社の社外取締役、株式会社ミクシィ社外監査役、中央大学法科大学院兼任講師などを歴任。現在、磯崎哲也事務所代表。公認会計士、システム監査技術者、公認金融監査人。
著書に『起業のファイナンス』(日本実業出版社)がある。ブログ:isologue、Twitterアカウント:@isologue。
磯崎:「日本は起業家に冷たい」と思い込んでいる人がとても多い。でも「冷たい」ってものすごく抽象的な言葉ですよね。
例えば「日本が漫画家に冷たい国か?」という問いに置き直すと分かりやすいと思うんです。日本ではトップレベルの漫画家たちは年収1億円をはるかに超えている。もちろん全員が1億円を稼げるわけではない。漫画家を目指したものの、諦める人も多い。漫画の世界は厳しいのですが、世界的に見ると最も「漫画家に優しい」国であるのは、誰しも認めるところですよね。
また、お笑いの世界でも同じです。トップレベルの人たちはたくさん稼いでいますが、売れていない芸人さんたちは日々の生活を送るのも大変です。でも世界と比較すると、日本はお笑い芸人にとって最もいい国の1つではないでしょうか。さらに飲食業の世界もそう。ミシュランを見ると、日本は世界一星が多くて、外国から来る人も外国から帰って来た日本人も多くの人が口をそろえて「日本の飲食のレベルは高い」と言います。
考えてみると日本は、国がヘンな規制をしてなくて個人が自由に活躍している領域では、非常にクオリティが高いわけです。もちろん日本人が遺伝的に能力が低いなんてことは全くないわけです。「何かをしよう」とチャレンジ精神に燃えれば、やるときゃやる奴らが集まっていると思います。
起業の現状を考えると、まだ本当の競争が起こっていない。そもそも世界に比べて、圧倒的に起業する質も量も少なくて競争相手が少ないですから。だから日本のベンチャービジネスの現状は「冷たい」というよりは、「生ぬるい」と言った方が適切ではないかと。
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