コラム
» 2010年12月15日 08時07分 公開

松田雅央の時事日想:トルコ系移民が増えて、どんな問題が起きているのか (3/3)

[松田雅央,Business Media 誠]
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移民社会のもたらす多様性

 以上は概要としては間違いないものの、ステレオタイプな内容であることも確か。すべてのトルコ系移民に当てはまるわけではなく、筆者には勤勉で尊敬できるトルコ系移民の知り合いも多い。

 大学の語学コースで筆者と一緒に学んだアブドラは本国で生まれ育ち、大学で機械工学科を学んだトルコ系移民だ。両親が20年来ドイツで出稼ぎしていることもあり、将来の就職のことを考えドイツの大学でさらに勉強することを選択したそうだ。彼は1日5回のメッカへの祈りを欠かさず、イスラムの教えに従い正しく生きている。筆者はイスラム教との接点をほとんど持たないが、真面目で信仰に熱い彼の生き方にはリスペクトを感じる。

 移民にとっての「社会適応」とは決して「ドイツ人のようになること」を意味しない。独自の宗教や言語は大切なアイデンティティーとして保ちながらも、ドイツ社会とのより良い関係を探り、社会の対等な一員として認められることがすなわち適応だ。移民社会とドイツ社会が仲良く共存すための工夫ということである。

 国と自治体は移民のドイツ語習得を手助けするため語学コースに補助金を出したり、文化交流会などを積極的に開催している。また2005年からは、ドイツで生活するための語学習得と歴史・文化・法律の理解を目的とした「統合コース受講」が新たな移民に義務付けられている。現役の保健相フィリップ・レスラー(37歳)はドイツ史上初めて移民系出身(ベトナム系)大臣であり、州の省庁でも移民系の大臣や幹部が決して珍しくないなど、移民系市民の活躍できる場は着実に広がっている。

 本稿では移民社会の抱えるネガティブな話題が中心になってしまったが、移民社会には魅力的な面があることも忘れてはならない。文化的な多様性がそのひとつで、移民が生き生き暮らす社会は包容力があり活気に満ちているものだ。人もモノも情報も国境を越えて行き交う時代に、移民を恐れていては国際社会に取り残されるのは必至。移民の増加は必ず社会に軋轢(あつれき)を生むが、何より求められるのはそれを乗り越える知恵と勇気である。

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