カネを返せなくなった……この人は本当に“弱者”なのかちきりん×磯崎哲也のマジメにおちゃらける(5)(1/3 ページ)

» 2010年12月17日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 消費者金融などからお金を借りたものの、何らかの理由で「返せなくなった」というケースは少なくない。例えば漫画『ナニワ金融道』や『ミナミの帝王』といった作品では頻繁に描かれているシーンだ。

 そしてお金を借りた人には「かわいそう」、お金を貸した業者には「悪」といったレッテルが貼られがち。しかしこうした考え方に対し、公認会計士の磯崎哲也さんは異を唱えた。

磯崎哲也(いそざき・てつや)さんのプロフィール

1984年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。長銀総合研究所で、経営戦略・新規事業・システムなどの経営コンサルタント、インターネット産業のアナリストとして勤務。その後、1998年カブドットコム証券株式会社の社外取締役、株式会社ミクシィ社外監査役、中央大学法科大学院兼任講師などを歴任。現在、磯崎哲也事務所代表。公認会計士、システム監査技術者、公認金融監査人。

著書に『起業のファイナンス』(日本実業出版社)がある。ブログ:isologue、Twitterアカウント:@isologue


お金に関する教育が不十分

公認会計士の磯崎哲也さん

ちきりん:日本の金融行政をみていると、お上がどの業界を守るのかというのも明らかだなあと思いましたね。いくつかの銀行は破たんしましたが、基本的には「銀行は助けるべき」というスタンスですよね。しかし証券会社は半分くらい見捨て、消費者金融だとほぼすべて潰れてもいいと思っているみたいです。決済機能の有無云々だけではなく、裏に日本的な価値観の問題もあるのではないでしょうか。

磯崎:そもそも日本で消費者金融が発生したのは、市場原理がうまく機能していなかったからです。米国では銀行がカードを発行して、そのカードでお金を借りることがきる。リボ払いが当たり前なので、そこで一定の信用が担保されます。国民はいわば“借金漬け”にされていますが、あまり社会問題化しないようになっている。いいか悪いかは別にして、そういう構造になっている。

 しかし日本でのクレジットは、もともと割賦からきている。これは通商産業省(現・経済産業省)の管轄なんですよ。一方の銀行は大蔵省の管轄(現・金融庁)。両者の間で垣根争いがあったので、銀行はクレジットカードを積極的に扱うことができなかった。だから銀行の別会社でクレジットカードを発行していました。役所のせいだけではなく、そもそも銀行は戦後日本の復興のために企業金融が中心で、リテール分野にはなかなか目が向かなかったんですよ。

 消費者金融の専業者は、各地域ごとに信用情報センターを作って、そこで顧客の借入データを交換することに成功した。お金を貸す上で最も重要なことは、その人が他社でいくら借りているのか、というデータ。個人のバランスシートが見えないで、お金を貸すことほど恐いことはない。他社でどのくらいお金を借りているのかという情報は重要なわけですが、その情報は消費者金融の業界であれば見ることができる。

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