それでもベンチャー企業で働きますか? ペケ社長の見分け方吉田典史の時事日想(2/4 ページ)

» 2010年12月17日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

創業経営者は自己中心的

 創業経営者は、したたかである。賃金とか有給休暇の件になると、話をそらす。それ以上、社員が不満を述べると、辞める方向に追いやる。皆の前で叱りつけたりして元気をなくさせ、辞表を書くようにしていく。それでいて、取引先には「彼女がどうしても辞めたいと言うから、しぶしぶ認めた」と言ってのける。怖いくらいに、自己中心的なのである。

 経営者を支えるパートナーは数人いる。この人たちは創業に近い時期に入った場合が多い。だが、仕事の進め方やお金の分配でもめてケンカ別れをしていくケースが目立つ。経営者はその理由を聞かれると、「彼とは進んでいく方向が違った」と俳優のようなセリフを吐く。私には自己中心的な人どうしのケンカにしか見えなかった。

 結局、徹底したイエスマンか、転職ができないレベルの人が側近として残る。特に大黒柱的な存在が、営業部の責任者であるマネージャー。この人だけは優れている。そして、経営者とマネージャーのコンビで稼ぎまくる。売り上げは6億円〜8億円、社員数は30〜60人ほどになる。この間、辞めていく人は30代前半までを中心に絶え間ない。毎月、入社式をしていた会社もあった。

命運を分ける2つのパターン

 ここで経営者たちがぶつかるのが、前回紹介した「10億円の壁」である(関連記事)。この時点では、社員教育などによりすべての社員たちの底上げができていない。経営者にはそのような時間も心の余裕もない。マネージャーとその命令通りに動く数人の営業部員だけの会社になっている。

 営業マネージャーは優秀であるがゆえに、稼げない部下がなぜ契約が取れないのかが分からない。だから、ヒステリックに当たる。それに嫌気がさし、20代の社員は次々と辞めていく。マネージャーは「根性がない」と突き放し、自らの指導を振り返ることをしない。経営者はそれを見て見ぬふり。2人は盟友であるが、突っ込んだ話し合いをしない。実は、表向きの盟友でしかない。

 社内は、それぞれの社員がバラバラに動く“個人戦”になっている。皆が同じ価値観や言語を持ち、共通の目標に向けて進んでいく“組織戦”にはなっていないのだ。売り上げはまだ低く、利益もさほど出ない。それなので資金がコンスタントにショートする。そこで経営者とマネージャーはそれまでの成功体験にしがみつつ、力技でなんとか乗り越えようとする。

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