それでもベンチャー企業で働きますか? ペケ社長の見分け方吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年12月17日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 実は、この成功体験に固執することが悲劇を招く。ベンチャー企業で働きたい人は、この壁の前で経営者たちが何を感じ、どのような行動を取るかに注意をしたほうがいい。結果は、大きく2つに分けられる。

A:売上3億円〜5億円前後に戻り、名もなき中小企業で終わる

B:10億円はもちろん、30億円にたどり着くヒントやきっかけをつかむ

 私が取材をすると、Aに陥るケースが圧倒的に多い。その理由は、経営者と営業マネージャーのコンビが時間をかけて丁寧に部下を育てていくことができないからだ。教育には時間がかかるとか、どれだけ教えても部下は命令通りには動かない、つまり、いい意味であきらめるという「教育の本質」を心得ていない。2人は優秀であるがゆえに、完璧なものを求める。

 その間に売り上げは伸び悩む。資金ショートが続き、いよいよ、このコンビがケンカを始める。よくあるのが、営業マネージャーが子分を数人連れて退職し、営業力が大幅ダウンすること。また3億円〜5億円ほどに戻り、経営者は新たな営業マネージャーを雇う。若手は「ここでは無理だ」と悟り、どんどん辞めていく。

 この繰り返しが続くが、マネージャーのレベルは変わるごとに落ちていく。教育は依然としてできていないから、部員のレベルは年々下がる。そのうちに3億円〜5億円前後を維持することすら難しくなる。これが、日本の多くの中小企業の素顔である。

何かに飢えている創業経営者

 ベンチャー企業に行くならば、Bの会社を選んだほうがいい。経営者とマネージャーのコンビが部員の底上げをしつつ、次のマネージャーを選び、早くから育成している。ここで多くのマネージャーは警戒する。次のマネージャーが育ったら、自分の居場所がなくなる。そこで恐怖感を感じ、優秀な部下を潰すこともある。

 優秀な経営者はそれを見過ごさない。私が取材した会社の中には、後継者を育成した時点で営業マネージャーを辞めさせたケースもある。経営者は「組織の発展を阻害する人はたとえ身近な存在であろうとも、関係を断ち切ることはある」と答えていた。ただし、この場合はその後、伸び悩むことが多い。

 一番うまくいくケースは、経営者がマネージャーを本当の意味で盟友にしていくことである。2人がぶつかり合いながらも、許し合える関係になるのだ。そのプロセスでマネージャーは役員などに昇格する。

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