だが、借金大国とはいえ米国はいまだ大きく豊かだ。それに対して人口減で少子高齢化が進む日本は、マイナス経済成長の下、貯金を借金返済で使い果たし、やりくり次第では消滅するかもしれない。日本の処方せんについてアタリ氏は次のように語った。
「現実を直視しよう。日本の出生率は世界最低レベル、少子高齢化は進む。歳出が歳入を上回り、税収基盤は脆弱(ぜいじゃく)になる、巨額な国内貯蓄も債務返済にすべて費やされる。日本は今、クリアなビジョンを持つべきです。どういう国になるべきか、政治家がそして国民が議論しなければなりません」
アタリ氏が2500年の歴史を振り返ったところ、公的債務を解消するのは7つの方策しかなかったという。
日本は公的債務を解消するため、「歳出削減」「消費税と所得税の増税(格差是正)」「家族政策、人口増」「イノベーション」を同時並行すべきとアタリ氏は語る。
異論はない。ただ「事業仕分け」という歳出削減は、債務削減効果よりも官僚へのけん制効果しかあげていないように見える。海江田大臣はアタリ氏に「子供手当は70%が反対している」と嘆いたが、家族政策や移民政策でも与野党、国民に一致点は見えない。そして増税を言い出した菅直人首相は選挙で痛い目にあって、今や及び腰。そもそも1年未満の政権交替政府では、腰をすえた公的債務削減策を打ち出せるわけがない。
政策の1つ1つは間違っていなくても、大局を示していないから、仕分けも増税も子供手当もなぜ必要か、どのくらいの緊急度なのか、フォーカスが合わない。だから国民は脱力し、イライラする。感情論で内閣支持率が上下する。
「日本の将来には期待が持てない」「今後どんどん日本は貧しくなる」と予想する人は多い。しかし、貧乏な国になりたいと願う人はいないだろう。そうならないためにはどうしたらいいのだろうか?
そのためには、国民も政治家もアタリ氏の「増税が経済成長を阻害することはない。間違ったお金の使い方が成長を阻害するのだ」という主張に耳を傾けるべきだと思う。
1つ提案をしたい。公的債務を「国家債務」と呼び替える。そして社会保障や社会資本整備など「使う方」ではなく、「国家債務をどうするのか?」「どう返済するのか?」「国民のコンセンサスをどうとるのか」という点からのみで、各政党のマニフェストを選挙で評価するのだ。党利・私欲でなく、この危機に身を投げ出す人を見極め、4つの政策を粛々とやれそうな政党・政治家に投票する。そうしないといよいよマズいと思うのだ。
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