なぜ私たちは理想のリーダーに巡り合えないのか?ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2011年02月28日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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なぜ私たちは理想のリーダーに巡り合えないのか?

 同じ視点で日本の政治リーダーを見てみましょう。小泉純一郎元首相を含め、自民党政権の後半ではずっと世襲総理が続きました。このことは、自民党が世襲以外の総理大臣育成方法を持ち得ていなかった、という本質的な問題を示しています。

 新たに政権をとった民主党はどうでしょう? 鳩山由紀夫前首相は世襲でしたが、現首相の菅直人氏は学生運動や市民運動をしていた経歴の持ち主です。辻元清美氏など、ほかにも社会・市民運動出身の大臣経験者がいるし、労組のリーダーを務めた人も多く入閣しています。これは、過去において市民団体や労働組合などがリーダーを育てる土壌の1つとして機能していたことを示しています。

 また、大臣など要職を務めるメンバーの中には松下政経塾の出身者も増えており、民間の経営者がイニシアチブを発揮して設立した団体が、国のリーダー育成のための土壌して機能していることも見受けられます。この点では現政権は“世襲以外ではリーダーを育てられなかった自民党”より、余程マシに思えます。

 しかし、多くの選択肢の中からベストなリーダーを選ぶためには、さらに大きな「リーダー候補の基礎母集団を形成する仕組み」が必要です。そうしないといつも“決まった顔”の中から次のリーダーを選ぶことになってしまいます。

 例えば、お金も地盤もないグループから新しいリーダーが出現してほしいと望むなら、ネットによる選挙活動の解禁や、ネットを使ってクレジットカードで小口の寄付ができる仕組みが不可欠です。若者のリーダーを求めるなら、携帯電話やコンビニATMでの投票ができるようにすることも重要でしょう。一票の格差問題も早急な解決が必要です。

 私たちは「今度の総理もだめだった」と1年ごとにトップの首をすげ替えています。しかし、そもそもまともなリーダー候補が存在しないのであれば、いくら首をすげかえても満足のいくリーダーに巡り会うことはできません。また、リーダーを養成する仕組みも作らずにただ待ち続けていても、“救世主”がいきなり登場することはないでしょう。

 遠回りに見えても、まずは国のリーダーを育てる仕組みから作り始め、それによって多数のリーダー候補が養成され、その中から国民の支持を得た人が国のリーダーの地位に昇っていくという仕組みを、たとえこれからでも作っていくべきではないでしょうか。

 そんじゃーね。

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著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

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