「人間は強いですから」――復興にかけるトラックとコンビニの物語郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年04月07日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotobike


 東日本大震災をどこで迎えましたか?

 震度5弱以上は17都県、426市区町村、734地点にわたった(気象庁発表)。誰もが忘れられない体験をした。

 ローソンの広報スタッフは虎ノ門にいた。3月29日から発売するUchiCafe SWEETSの新作デザート「2011春コレ」発表会があった。“シーズンズコレクション”として、旬の素材を使ったUchiCafeを年4回発売する。その第1弾の6つの戦略商品を発表していた。

 その終了間際、大きく揺れた。交通機関はストップ。スタッフは当初待機していたが、夕方大崎の本社までの8キロを2時間歩いて戻った。本社では地震発生後から5分後には災害対策本部が設置され、CCO(チーフ・コンプラアンス・オフィサー)を中心に対応に追われていた。

 「レントラ便」のハーツ社長の山口裕詮(やまぐち・ひろあき)さんは、大崎の本社の近所を歩いていた。「この揺れは尋常ではない」と思った。レントラ便とは「運転手付きのトラックレンタカーサービス」で、ドライバーが荷物の運搬も手伝うというサービス。山口さんは会社に戻り、交通状況をチェックした。首都高はすべて不通。確かに尋常ではなかった。

 20時過ぎ、ローソンの災害対策本部からハーツに電話が入った。山口さんが受けた。

 「救援物資を東北まで運んでもらえませんか」 

 「店舗の被災を調査する緊急調査応援部隊を派遣したい。だが年度末でどの運送会社もクルマが出せない」とローソン。みんなホンネでは道路の状況が分からないところに行きたくないし、「福島は危ない」という風評もすでに広がっていた。対策本部は困りきっていた。

 ハーツでもドライバーは出払っていた。しかし、クルマは融通できた。山口さんは考えた、「危険な所に社員を行かせられない。オレが行こう」。ローソンの依頼を承諾した。

 「協力先が見つかりました!」

 担当者から報告を受けた時、対策本部はどっと湧いた。

 23時、ローソン広報はプレスリリース「東北地方太平洋沖地震に対する救援物資のお届けのお知らせ」を出した。

 ローソンでは宮城県等の対策本部と連絡を取り、下記救援物資を被災地域に運搬します。<水、カップラーメン、箸、乾電池、使い捨てカイロ、マスク>

 山口さんは自身のブログにこう書いた。

 「急遽、仙台へ向け出発します。もちろん救援物資を運ぶためです。道路が寸断されている箇所もあるかと思いますが、この国難を黙って見ている訳にはいきません」

撮影:山口裕詮さん

 翌3月12日の17時、東京を出発したレントラ便他トラック4台には、物資やスクーターが積まれていた。阪神・淡路大震災の時、被災地で役立ったからだ。

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