ローソンの宮城県対策本部から「オニギリを現地で作りたい」という声があがった。東北地方の5工場のうち4工場で3月15日までに電力が復旧したのだ。問題は不足する燃料と材料の輸送。九州の加盟店オーナーからタンクローリーを借りて、燃料を運ぶメドをつけた。3月15日に米や具材の原材料と燃料を運んだ。ちなみに具材は腐りにくい昆布、おかか、梅に限定。明太子はムリだ。
ローソンの3月15日の店舗状況は↓まで回復していた。
県名 | 店舗数 | 営業店舗数 | 休業店舗数 |
---|---|---|---|
宮城県 | 165 | 130 | 34 |
岩手県 | 161 | 123 | 38 |
福島県 | 96 | 76 | 37 |
2日前よりも劇的に改善した。3月17日には、航空自衛隊輸送機で救援物資のオニギリとパンを小牧基地(兵庫県伊丹市)から福島空港まで輸送。3月18日には店舗の耐震状況の調査のため、建築専門家も派遣した。仙台空港そばの物流センターの被災の影響は大きかった。低地の物流センターは今後見直しするという。
早期の開業は現場の努力だけでなく、東京の対策本部の努力もあった。店舗状況把握と支援調整、物資調達、節電対策、工場間調整、さらにマスコミ対応など押し寄せる業務。毎日毎日、深夜24時前後が本部の終業時間だった。
一方、山口さんは3月17日、陸前高田市にいた。3度目の現地への物資輸送である。そこで見たものはコンビニではなく、瓦礫だった。
彼は言葉を失った。何もできず立ちつくす地元の人を見て、また言葉を失った。このローソンだけでなく、山口さんは気仙沼市のセブン-イレブン、大船渡市のファミリーマートなど瓦礫の中の店舗をいくつも見た。瓦礫か店舗か分からなかった。ここから立ち上がることができるのだろうか? だが、あるローソンの加盟店オーナーはこう言ったのだ。
「人間は強いですから」
「瓦礫の中からでもできる」と。加盟店オーナーは地元の顔である。雇用にも販売にも責任を持つ。商品と人を結ぶ地元のハブである。だから電気が無くても、懐中電灯で自力営業もする。だからできる。いや、やるのだ。
山口さんは4月1日までに、東北へ7回、被災者の避難先の河口湖も入れれば8回の物資輸送をしている。福島県に入るたびに熱いものがこみあがる。物資は供給が増えれば何とかなる。だが、すぐにどうにもならないこともある。山口さんはブログとFacebookでこう宣言した。
ローソンも熱い。この状況下でUchiCafe SWEETSの新製品、予定通り3月29日に発売した。
「担当者が意地で出しました」
この取材を私は別々のものとして行った。過去の2つの記事(ローソンのロールケーキとレントラ便)の縁があって、被災時の様子をうかがおうと思ったのだ。ところが、くしくも両者は東北でつながっていた。熱さは熱さを呼ぶ。国難だからこそ、1人1人再興へ意地を見せよう。
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