はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。
※本記事は、「Chikirinの日記」において、2009年1月12日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。
「規制すること」と「規制を守らせること」は、言葉は似ていますがまったく異なる概念です。
権限のある当局が、プレーヤーである企業や個人の行動に制限をかけるのが「規制」です。
一般的に官庁や行政の長は「規制強化」を望みます。なぜなら彼らにとって規制とは「権力の源」だからです。また規制はその「中」に入った人たちを守ってくれるので、それらの人たちもいつしか「規制緩和には絶対反対!」と言い出します。これが「既得権益層」です。
反対に、今持っているものが少ない人、例えば新興企業、新しい産業、若い人などにとっては、規制緩和や自由化が有利です。また「規制は少なければ少ないほど、経済全体がうまく回るはず」と主張する規制緩和論者もいます(ちきりんもその1人です)。
一方、「規制の監督」とは、規制が遵守されているかどうかを監視し、守られていなければ是正させることで、規制自体とは別の概念です。規制自体は「もっと緩和すべき」と考えている私も、規制の監督については「もっと強化すべき」と感じることが多くあります。
例えば、派遣という働き方に関して、「派遣制度自体を禁止するべき!」と主張をする人がいます。この人たちは「規制強化論者」です。
しかし、派遣法を巡る問題の大半は「規制の監督」にあったはずです。数年ごとに形式的に契約を分割して正社員化を避けたり、派遣社員でも適用されるべき年金や健康保険への加入手続きを怠ったり……さまざまな脱法行為が行われたのは、規制の監督ができていなかったからです。
であるならば、解決方法は「規制の監督をより強化する」ことのはずです。それなのに、何か問題があったから派遣制度自体をなくしてしまえと主張するのは、いかにも安直です。
運用上の問題が起こるたびに制度自体を全否定していたら、新しい仕組みは何1つ社会に定着しません。新たな制度をどうやったら適切に運用できるのか、社会全体で工夫や努力をすることが求められているのです。
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