ニュース
» 2011年06月03日 13時00分 公開

ほぼ全文公開! 乙武洋匡&斉藤徹が語る映画『ソーシャル・ネットワーク』(2/5 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

マーク・ザッカーバーグとスティーブ・ジョブズは似ている

吉岡 映画の中身に踏み込んでいこうと思うのですが、お二人はどんな場面が印象的でしたか。

乙武 僕は斉藤さんと違って、まったく知らない世界とか対照的な価値観だったりするので、「こういう世界があるのか」という面白さを感じながら見ていました。主人公のマークが孤立していく感じや、「ちょっと意固地になっているのかな」と思うような場面とかが面白くて、先ほどお話しした事業がどんどん大きくなっていくという楽しみ方とともに、「主人公の心理描写もうまく描いているなあ」なんて思いながら見ていました。

吉岡 斉藤さんはさっき生々しいとおっしゃいましたが、IT業界でなくても、ベンチャー企業はあんな感じなんですかね。

斉藤 そうだと思いますよ。ただ、Facebookで特徴的だったのはマークが思いっきりギーク(コンピュータオタク)なんですね。それに対して、友人のエドゥアルドがエスタブリッシュな感じですよね。マークがギークという新しい時代の象徴であるのに対して、エドゥアルドが今までのビジネスマンの典型的な知性ということで対照的でした。また、身長195センチでマッチョのウィンクルボス兄弟も別のパワーの象徴ですね。

 その3者がいろいろもつれ合いながら、その中でギークがそういったことを考えるのが苦手なのか、悩んでいる姿というのは深みがあって面白かったですね。

吉岡 あのウィンクルボス兄弟は実は1人が演じていたようですね。顔役の俳優と体役の俳優が2人いて、顔役の俳優が演技しているのをCGで合成しているんです。今回発売されたBlu-ray Disc&DVDの特典でメイキング映像が入っていて、それを見るとどうやって作ったのかよく分かります。

斉藤 メイキングで面白かったのは、冒頭のシーン(マークと恋人のエリカが喋る)を99回撮り直していたことですね。あのセリフはめちゃくちゃ長いですよね。演じた2人もプロですが、デヴィッド・フィンチャー監督もきっと本当に完璧主義なんですよね。

吉岡 乙武さんから見て、マークはどんな感じの人に映りましたか。

乙武 僕は周りの人とつながり合いながら何かをしていくのが好きなのですが、彼は自分の世界というのを結構大事にしていますね。元ライブドア社長の堀江貴文さんと同じような純粋な人なのかなと思いました。

 周りの空気を読みながら、自分をうまくすり合わせていくのが得意な人が特に日本人には多いと思うのですが、マークは「人がどう思おうと構わない。自分はこう思っていて、だからこれをするんだ」というのが潔くて、純粋なんだろうなと思いました。それは僕にはない部分なので、まぶしくも映り、心もとなく大丈夫かなと映ったりもして、その辺は面白かったですね。

(C)2010 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC. All Rights Reserved.

吉岡 ちなみにマーク本人は映画について、「現実と同じなのは衣装だけだ。好きな女の子に振られたからFacebookを立ち上げたわけじゃないし、俺はあんな人間じゃない」と言っているそうなのですが、斉藤さんは多分マークのインタビューなども読まれていると思うのですが、映画と現実とでどのくらい違うんでしょう?

斉藤 あまり読んでいないので、僕は答えられないです(笑)。でも、現実のマークは本当に純粋にFacebookを死ぬほど愛していて、世界を変えるぐらいにFacebookを広げようとしている感はありますね。あまりビジネスは考えていないというか。ビジネスやお金は多分彼の中で二の次、三の次みたいで、新しいリーダーシップだなと外から見ていて思いますね。

吉岡 映画ではマークを弁護士たちが持て余すシーンもありました。乙武さんは先生をやってらっしゃいましたが、ああいう子どもに当たったことはありますか?

乙武 あそこまで強烈なのはないですが、自分の個性を主張したり、「周りの空気なんて知らないよ」という子はいますよね。

吉岡 先生としてはやりにくいんですか?

乙武 やりにくいと思う先生の方が多いと思います。先ほどお話ししたように、「和をもって尊しとする」みたいなところが日本人にはあるので、みんなと違ったことをやりたがったり、「空気読んでよ」みたいなものに乗っかれない子がいると、「ええっ」となる先生は多いと思います。

 僕はそういう子がいると、面白がれるタイプの人間です。その子と周りの子とのすり合わせに多少苦労すると思うのですが、まあ(マークは)日本の教育システムの中では育ちにくい人材なのかなという印象は受けますね。

斉藤 僕はああいうタイプの人材がすごく好きなんですよ。ギークな感じというよりも、自分の信念を曲げないで、常識にとらわれずに作り上げていくということが。

 (生放送を見て)ツイートした人もいましたが、アップルCEOのスティーブ・ジョブズにもちょっと通じるし、歌手のレディ・ガガにも通じるし、もしかしたら『踊る大捜査線』の青島俊作刑事にも通じるのですが、僕はみんな好きなんですよ。自分の信念を大切にする人が。マークもきっとそんな素敵な奴なんじゃないかと思いますね。

 スティーブ・ジョブズが1997年にアップルの暫定CEOとして復帰した時、「クレイジーな人たちがいる」というCMを打ち出したんです。

アップル(Apple)CM クレイジーな人たちがいる

 「クレイジーと言われながらも自分の信念に従って世の中を変えた人たちがいる。誰もそれは否定できないんだ」と訴える感動的なCMがあるんです。やっぱりFacebookのような、世の中を変えるようなものを作り出す人たちの原点は常識にとらわれない信念なんですよね。堀江さんもきっとそういうタイプだったんですよね。

吉岡 「和をもって尊しとする」みたいなところに行くと、周りからやいのやいの言われたりするんでしょうね。

斉藤 もちろん和も大切ですよね。いろんな個性があって、そのプラスなところが信頼で結び付くようなカンパニーが一番いいですよね。

乙武 そういう意味では突拍子のないことを考え、「ほかの人がどうあろうと、自分はこれをやりとげるんだ」という強い意志を持った人間に加えて、その彼のアイデアやパワーを一般になじませていくパートナーが重要になってくるのかなと思います。

 『ソーシャル・ネットワーク』だと、エドゥアルドが本来はそれをやる役割なのですが、だんだん関係がおかしくなっていきますよね。一般になじませていくということにも、才能があるのかなと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセスランキング
  • 本日
  • 週間

    Digital Business Days

    - PR -