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» 2011年06月03日 13時00分 公開

ほぼ全文公開! 乙武洋匡&斉藤徹が語る映画『ソーシャル・ネットワーク』(5/5 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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日本でマーク・ザッカーバーグのような人材がどうしたら出てくるのか

吉岡 Twitterで質問をいただいているので、いくつかご紹介したいと思います。「お二人は5億人の友達&ビジネスの成功と1人の愛する女性&僚友のどちらを選びますか」という質問なのですが。

斉藤 僕は今年で50歳のおっさんなので、この年になると後者だったりするんですよね。真面目な話。自分の心の平穏がだんだんに大切になってくるので。

 それの基礎となる収入も大切で、適正な収入があったらもっと幸せな生活ができますが、収入や拡大を目的とすると、心が荒廃することが多いんですよね。あくまでそれは結果としてついてくればいいもので、僕は本音で後者だったりしますね。

乙武 僕は天秤に乗せるまでもなく後者ですね。多分、僕の人生のどの時期をとっても前者が勝つ時期はなかったんじゃないかなというくらいです。映画の感想で「僕はマークと対極的だと思う」と言ったのはその辺からです。友達も3人くらいでいいです。

吉岡 では2問目、「『ソーシャル・ネットワーク』の主人公のように、出る杭がどんどん伸びていけるような日本にするにはどうすればいいとお考えになりますか?」。

乙武 まず、子どもたちを教育する教師に、多様な価値観を認める人材を採用することですね。3年間の教員生活で感じたのは、頭ではみんな「子どもたちの個性を尊重しよう」と分かっているんですよ。でも、そう思っている教師に多様な価値観を認める心が育っていないので、結果的にみんな一面的にとらえようとするし、自分の生きてきた中での価値観に当てはめようとするんですね。

 だから、マークのような人材がいたとしても、恐らく「そんなんじゃきっと将来困ることになるわよ」みたいなことを言って、自分のフィールドに引きずり込もうとするんですよ。異業種で働いた経験がある人や、海外など異文化で生活した経験のある人のような、さまざまなバックボーンを持った人が教える側になることが第一じゃないかと思います。

 子どもは柔軟なので、新しい文化を持った住人が入ってきても、「ああ、こういうのもあるんだ」という風に思えるんですよ。でも、せっかくみんなの視野や価値観を広げるような材料があっても、大人が「いや、でもそれはこうだから」とストライクゾーンをどんどん狭めてしまうということはすごく感じますね。

斉藤 僕は失敗を認める文化、失敗を重んじる文化がとても大切だと思っています。常に成功が求められたり、失敗できないような文化だと、縮こまってしまいますよね。映画ではショーン・パーカーが登場していましたが、彼は大きな失敗をしたんです。

 米国のベンチャーキャピタルは失敗しないと一人前と認めないんですね。でも、日本のベンチャーキャピタルや銀行というのは、一度でも失敗経験があると大きなマイナスになる。僕は20年経営しているので、いっぱい失敗してきたんですよ。でも、成功で学んだことって本当にほとんどないですね。失敗するととても多くのことが学べて、次につながるんですよね。失敗を重んじる、「どんどん失敗しよう」「ガンガントライしよう」という文化が日本に根付けば、もっと個性的な人が出てくるんだろうと思いますね。

吉岡 最後にもう1問、「映画のように、身近な人に裏切られた時はどうしますか?」。

乙武 まず、自分を裏切った人に対する、それまでの接し方をとにかく振り返って反省しますね。裏切られるというのは、相手からは心からの信頼がなかったけど、自分は信頼をしていたということです。相手を責める前に「自分に何か問題があったんじゃないか」「こういう手を打てたんじゃないか」、そんなことを考えてしまうんじゃないかなという気がしますね。

斉藤 僕もまったく同じです。真面目な話、裏切られたからそれに対して反射的にこういう風にしようとはまったく思わないですね。そういう風に思うと、心の平穏が乱されるので。人はそもそもコントロールできないし、コントロールできるのは自分の心だけですよね。その自分の心や行動を修正していくことしかできないですね。

 先ほど「失敗はとても大切な経験だ」と言いましたが、倒産した時の社長は2つに分かれるんですね。自分にどういう問題があったのかと、自分の方向を向いて反省する人と、もう何も信じられないとすべて周りのせいにして、お金と動物くらいしか信じられないようになってしまう人とに。後者のようになると、失敗は経験にならないんですよ。

 自分のコントロールできる範囲内で改善していこうという気持ちと、失敗が一体になって初めて経験になる。裏切られるというのも1つの失敗だと思うのですが、その時に自分自身を振り返るという、乙武さんのおっしゃられるようなことがとても大切だと思いますね。

乙武洋匡・斉藤徹が語る『ソーシャル・ネットワーク』

映画『ソーシャル・ネットワーク

あらすじ:“フェイスブック”を創造した若き天才の素顔。彼はいかにして億万長者になり、5億人の友達を創ったのか? 今、最も熱い賞讃を浴びる至高の知的エンタインメント!!

2003年。ハーバード大学に通う19歳の学生マーク・ザッカーバーグは、親友のエドゥアルド・サベリンとともにある計画を立てる。それは友達を増やすため、大学内の出来事を自由に語り合えるWebサイトを作ろうというもの。閉ざされた“ハーバード”というエリート階級社会で「自分をみくびった女子学生を振り向かせたい」――そんな若者らしい動機から始まった小さな計画は、いつしか彼らを時代の寵児へと押し上げていく。若き億万長者は何を手に入れ、そして何を失うのだろうか―?

5月25日にDVD(2980円)&Blu-ray Disc(3990円)をリリース。


乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)

1976年生まれ、東京都出身。大学在学中、自身の経験をユーモラスにつづった『五体不満足』(講談社)が多くの人々の共感を呼び、500万部を超す大ベストセラーに。大学卒業後は、スポーツライターとしてシドニー五輪やアテネ五輪、サッカー日韓共催W杯などの大会を現地取材。2007年4月から2010年3月には杉並区立杉並第四小学校教諭として勤務し、3・4年生を担任した。現在は、メディアを通して教育現場で得た経験を発信していく活動を柱としている。

乙武洋匡オフィシャルサイト:http://www.ototake.com Twitter: http://twitter.com/h_ototake

斉藤徹(さいとう・とおる)

ループス・コミュニケーションズ代表取締役社長。 1985年3月慶應義塾大学理工学部卒業後、同年4月日本IBM株式会社入社、1991年2月株式会社フレックスファームを創業。2004年同社全株式をKSKに売却。2005年7月株式会社ループス・コミュニケーションズを創業した。現在、日本国内での企業のコミュニティ構築分野でトップシェアを誇るほか、ソーシャルメディアに関するコンサルティング事業を幅広く展開している。「新ソーシャルメディア完全読本」「ソーシャルメディア・ダイナミクス」「Twitterマーケティング」「Webコミュニティで一番大切なこと」「SNSビジネスガイド」など著書多数の他、人気ブログ「In the looop」も運営している。

ブログ: http://blogs.itmedia.co.jp/saito/ Facebook: http://facebook.com/inthelooop

Tumblr: http://inthelooop.tumblr.com Twitter: http://twitter.com/toru_saito


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