人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。
日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――筆者は、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏です。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。
焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」での、牛生肉を使った韓国料理「ユッケ」による食中毒事件発覚から1カ月が経過した。牛生肉に付着した腸管出血性大腸菌O−111に起因するこの事件の被害者は、死者4人、重症者24人、中毒患者数102人(5月8日時点)。地域的にも富山・福井・神奈川の3県に及んだ。
振り返ってみれば、日本の「食」の業界は、ここ10年ほど不祥事続きであった。ミスタードーナツ、不二家、ほっかほっか亭、ロイヤルホスト、石屋製菓(白い恋人)、赤福、比内地鶏、船場吉兆、博多っ子本舗(明太子)、日本マクドナルド、JR東海(駅弁)、中国産うなぎ、中国産フグ、ブラジル産鶏、汚染米。牛肉関連では、雪印、日本ハム、ハンナン、ミートホープ、丸明(飛騨牛)。以上20件、すべて偽装事件である。
こうした、いつ果てるともしれない不祥事発覚を通じて、日本の食品業界に対する社会的信頼はすでに大きく損なわれていたと言って良いだろう。そうした業界不信の時代にあっては、当然、生活者側も用心深くあって当然のようにも思われるのだが、事件は起きてしまった。
子どもや年配者の犠牲まで出した今回のような痛ましい事件を、なぜ未然に防ぐことができなかったのか。そして、今後、こうした事件から自分や回りの人々の身を守るには、どうしたらよいのだろうか?
実は、何年も前から、ユッケを含めた肉の生食の危険性について、日本料理の料理人&飲食店経営者という立場から、メルマガやブログ、TwitterやFacebookなどさまざまな方法を通じ、業界内外に対して積極的に発言し、警鐘を鳴らし続けてきた人物がいる。池袋にある「樂旬堂(らくしゅんだいにんぐ)坐唯杏(ざいあん)」の総料理長&CEO武内剋己(かつみ)さん(48歳)だ。
武内さんは、ホテルの日本料理部門、老舗割烹、鰻割烹、郷土料理店、焼鳥店などで修行を重ね、10年前に独立し、坐唯杏を立ち上げた。現在、スタッフは15人で年商は1億3000万円。店名は、「木の下で何となく口を開けているような気持ちでいらしてください」という意味で、歌手のアン・ルイスさんが命名したという。
日本料理の伝統に立脚しながらも、それを現代という文脈に則して革新を加えながら手ごろな価格で提供。震災直後の4月の売り上げが対前年同期比で100%を超えるなど、“自粛ブーム”が続く厳しい時期にあっても顧客に支持されているようだ。その彼が鳴らし続ける警鐘とはどのようなものなのだろうか?
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