はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。
※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年1月21日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。
三浦展さんの『下流社会 第2章』という本のコラムに「37歳危機説」というものが載っていました。下記枠内はそのコラムからの引用です。
人生があまりうまくいっているとはいえない人にとって、37歳前後というのは非常に重い年齢なのではないかと思う。とすると、近年増えてきたフリーター、ニート、失業者などが37歳を迎えると、けっこうヤバイ状況が生まれるのではないか。
(中略)
35歳ならまだまだ若いという気持ちがある。しかし37歳というと、40代がぐっと近づいて見える。人生の折り返し点。人生のやり直しがいよいよきかない年齢になるのである。その時、フリーターや、ニートたちは、なかなか平常心は保てないのではないか。その中から、異常な犯罪に走る人間がでても不思議ではない。
必ずしも結論に賛同するわけではありませんが、この年齢に注目した着眼点はすばらしいと思いました。三浦展氏はフリーター、ニートにとっての37歳について書いています。しかし、より広く誰にとっても37歳は「いよいよ」の年齢だと思います。
例えば……(以下は本に書いてあることではなく、ちきりんの感想です)、
35歳くらいまでは「今の自分」とは「異なる自分」が将来にあるかも、という希望(妄想)を、本人も持てるし、世間も許容するし、実際に可能でしょう。
それが37歳を超えると、「将来の自分」は「今の自分」と本質的には変わっていないだろうと、確信的に思わされます。未来が今の延長線上でしか想像できなくなる。そういう年齢です。
三浦展氏は「人生があまりうまくいってない人にとって」という限定を置いていますが、実はうまくいっている人も同じです。順調な人にとって37歳はまさに「飛躍の年」でしょう。将来トップに上りつめる人は、この年齢あたりで確定します。
20代や30代前半でいくら「優秀だ」「あいつはトップエリートだ」と言われても、彼らが50歳になった時に本当の勝ち組になれているか、リーダーポジションについているか、不確実です。
20代だと、学歴や遺伝子、就職タイミング時の好不況やちょっとした巡り合わせが、その人の社会人としての成功・失敗を大きく規定してしまいます。「その人独自の判断や努力」がまだ効いていません。
でも37歳で勝ち組だったら、その理由は「遺伝子やタイミング」ではなくその人自身がやってきたことで決まりつつあります。だからその後の人生との相関が高くなるのです。負け組もまた同じ。「時代のせいだ!」などと叫んでいれば許されるのは35歳までです。
この年齢で「最後のレース」に残れない人の多くが、道を変更することになります。一方、この年齢で「勝ちに行く」人たちも積極的に自分の道を変更する必要があります。
例えば、今までは一生懸命仕事をしていただけの人も、この年齢からは所属する“社内派閥”を決めてリスクをとる必要があるでしょう。選挙に出るなど大きく道を変える人もこのあたりで“踏み切る”必要があります。
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