民主党は「政治主導」という、“穴”に落ちたのだ藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年06月13日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 辞任を表明したことで皮肉にも支持率が上昇した菅首相。与党内からも野党からも「1日も早い辞任を」と求められて、さぞかし憤まんやるかたない思いをしているだろう。何とか第二次補正まではと延命を図る首相だが、実際には民主、自民、公明で話のまとまっている復興基本法を成立させ、公債特例法案(赤字国債発行のための法案)の成立と引き換えに辞任という筋書きになりそうだ。

 政治の焦点は、次の民主党代表が誰になるのか、そして自民党との「大連立」を組むのかどうかというところに移っている。しかし大連立というのはどうもふに落ちない話だ。民主党と自民党の間で政策的な合意を形成することができるのだろうか。それをするためにどれだけの時間がかかるのか。

 もともと与野党で首相降ろしが始まったのは、菅首相の下では震災の復旧・復興がスピーディーに進まないという理由からだ。官僚をうまく使いこなせないとか、説明に来る官僚を怒鳴り上げるとか、菅首相についての悪口はあちらこちらで聞く。民主党の政権運営を「子どものサッカー」と例えた人もいる。ボールがあるところにみんなが集まって、チームプレーができないということだ。また「超法規的」な行動も多いと指摘した官僚もいる。

 言ってみれば、民主党は「政治主導」という落とし穴に落ちたのである。衆参ねじれ国会になってからいっそう目立った形になっているが、昨年の参院選で民主党が敗北する前の通常国会でも法案の成立率は半分くらいだった。つまり法案を成立させなかったのは与党内で縄張り争い、あるいは面子争いがあったからだ。政治主導というよりは“政治家主導”になっていたと言ってもいい。典型的には「俺は聞いていない」というせりふである。

 だからスピードを上げるために、菅首相を降ろして与野党が協力できるようにするということなのだが、大連立という時間のかかるやり方よりも、政策を限定して(とりわけ震災復興)与野党協力になるのだろう。それはそれで理解できないこともないが、日本が東日本大震災に足を取られている一方で、世界はどんどん動いている。

ポスト菅首相は誰か?
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