「iOS 5」「iCloud」で加速する、“怪獣大戦争”のゆくえ遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(1/3 ページ)

» 2011年06月15日 15時45分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

「遠藤諭の『コンテンツ消費とデジタル』論」とは?

 アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

 本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」にて2011年06月07日に掲載されたものです(データなどは掲載時の数値)。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所で読むことができます。


 6月6日に開幕した、アップル主催の開発者向けカンファレンス「WWDC 2011」の内容を見ていて(参照記事)、「これからコンピュータの世界はどこへ行くのか?」と思った人もいるはずだ。iOSの標準アプリの完成度がとても高くなって、サードパーティ製のアプリはいらないかもと思わせるものがある。また、iPhoneやiPadが母艦(パソコン)なしに使えるようになった。

 Twitterとの連携(参照記事)Game Center(参照記事)、同時に発表されたiCloud(参照記事)も見逃せない。「なぜTwitterなの?」という人もいるかもしれないが、プラットフォーマーとなったFacebookとは組みにくいというのもあるだろう。“リベラルアーツとテクノロジーの交差点”を標榜するアップルには、万人向けのFacebookよりも、Twitterのほうが相性が良いというのもあるかもしれない。『Twitterはコミュニケーション革命なんかじゃない』(参照記事)で書いたように、ネットならではのクリエイティビティがTwitterにはある。

 iCloudのほうは、iPhone、iPadがパソコンを必要としなくなったことと同時に、モバイルと非モバイルの関係を問い直させる。アップルでいえば、iOSとMac OSの関係である。そこで注目されているのが、Mac用のネイティブアプリではなく、「iOSアプリ(正確にはiPhone ApplicationとiPad Application)と「Webアプリ」の、どちらがこれからのコンピューティングの主流になるのか?」ということだろう。

 今回のiOSの進化(アプリケーションのブラッシュアップに注力)は、初代iPhoneが発表された当初の、標準アプリしかなかった時代を思い出させるものがある。当時(2007年)、私は『iPhoneは「携帯とPCを同次元にする」』という記事を書いたが、この中で、iPhoneとAppleTVは「コンピューターと通信の完全なる合体」という言葉を使った。

 当時の状況を振り返れば、Adobeが2007年6月、iPhoneの発売とほぼ同時にリリースした「Adobe AIR」を無視できない。HTMLやFlashなどを組み合わせて、独立したアプリケーションが作れるというAIRは、「コンピュータと通信の合体」を意味している(AIRを使った代表的なアプリケーションといえばPC用の「TweetDeck」だろう)。

 その「リッチインターネットアプリケーション」というコンセプトに対するアップル流の解釈が、すなわちiPhoneだったのだ。

 その証拠というのではないが、アップルがFlashに対抗するフレームワーク「Gianduia」(ジャンドゥーヤ)を開発中であることはよく知られている(参照記事)。ほとんど情報が出ていないので詳細は不明だが、アップル製のサービスでは、すでにGianduiaが活用されているとされる。現在のiOSアプリの開発環境は、その表現力や設計の自由度からして、これのiOS対応ができるまでの場つなぎ的なものかもしれない。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© ASCII MEDIA WORKS. All rights reserved.