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» 2011年06月08日 12時43分 公開

WWDC 2011基調講演リポート(3):「iOS」は繊細な軌道修正でさらなる発展を目指す (2/4)

[林信行,ITmedia]

2、「News Stand」

 これは新聞や雑誌などの定期購読型コンテンツを、アップルが用意した1つの本棚にまとめて表示する機能だ。

 これまで新聞や雑誌のアプリは、発行元ごとに別々のアプリになっていた。おまけにアプリケーションの起動中しか最新号のダウンロードができないので、アプリを起動するとダウンロード開始状態となり、すぐに読めないわずらわしさを感じることも多かった。

購読中の電子書籍すべてが1つの本棚で見渡せるようになる

 Newsstandは、これを解決する。1つの本棚にすべての新聞や雑誌を並べ、バックグラウンドでも最新号をダウンロードできるようにするという。気になるのは、読みやすさを追求して作り込んだ新聞アプリケーションをどう扱うのかだ。例えば、日本では朝日新聞のアプリケーションがかなり凝った作りになっているし、米国でもUSA TodayなどはiPhone/iPadの画面にかなり最適化されている。

 また、現在、表向きに出ている情報を見た限りでは、課金がどうなるのかが明らかになっていない。おそらくアプリ内課金(In-App Purchase)の仕組みをとるものと思われるが、独自のシステムで課金できないことを嫌う出版社、新聞社がいるかもしれず、その辺りがネックになりそうだ。

 実は筆者としては、これよりも先にiBooksの世界各国語対応を先に発表して欲しかった。というのは、日本の電子出版の業界は、先を考えないまま突っ走ったあまりよくない状態にある気がしてならないからだ。

 iPadの登場で、電子書籍、電子雑誌、電子新聞の発行に火がついた。腰の重かった日本の新聞社、出版社が、昨年のiPad発表から一気に動き始め、わずか1年の間に、これだけ多くの電子出版物を出したきたことは高く評価しなければならないと思う。しかし、日本の電子出版は、あまりにも将来の展望に対する議論がないまま、いきなり突っ走ってしまったのではないかという懸念もあった。

 性急に電子出版をたき付けた人々にも、ユーザーの利便性よりも、営業でビジネスを拡大することを優先した開発者にも責任がある。私は「今こそ電子出版について真剣に考える時期だ」と説明し、性急に乗り出すべきだと言ったつもりはなかったのだが、もしかしたら講演の聴講者の中にはそう捉えた人もいたかもしれない。

 書店と出版社の本棚型アプリケーションが乱立し、購入した雑誌ごとに、あれはどの本棚サービスから購入した本だったかいちいち覚えていなければならない世界。そんなものは誰も望まないはずだ。「あの記事が書いてあったのは、どの雑誌だっけ」と次から次へと別の本棚を開いて検索するようでは、電子媒体を買う理由が半減してしまう。

 出版社の方々には、この1年で築いた電子出版のやり方を、一時保留にしてでも、この発表をきっかけに5年、10年続く電子出版のモデルとは何かをじっくり考えてみてほしい(さらに先に進めてから進路変更をするよりは、今のほうがまだ楽なはずだ)。狭い所で競い合って、ユーザーの利に反する分断が進めば、いずれはアップルがこのような形で、分断の解消に力を入れてくるのは火を見るよりも明らかだ(もっとも、iBooksがその役割を果たすことも火を見るよりも明らかだが)。

 書籍のアプリケーション化に投資してノウハウを貯めるのはいいが、これ以上、本棚アプリケーションを作って市場を分断させることにあまり意味はないだろう。

3、「Twitter連携」

 ウワサはされていたが、iPhone標準のソーシャルメディアとしてTwitterが採用された。カメラで撮影した写真や、地図で表示した場所に、簡単なメッセージを使って共有できるようになった。さらにはソーシャルメディア系の開発や認証に慣れていないプログラマでも、自分のアプリケーションに簡単に「Twitterでつぶやく」機能を追加できるようになった。

 このことがすでに毎週10億postが行き交うTwitterにどんな影響を与えるのかは気になるところだが、写真や位置情報といったTwitterで最も共有されることが多い情報の共有方法が画一化されることで、可能になるイノベーションも多いと思う。

写真や地図を簡単に共有できるTwitter連携

4、「Safari」

 スマートフォンからのWebアクセス比率で64%を占める主流ブラウザ「Safari」も大きく進化する。

 複数ページにまたがる記事を簡単なスクロール操作で読む「Reader」機能や、あとでじっくりと読みたい記事を登録しておく(日本で言うところの「後で読む」機能を実現した)「Reading List」機能、そしてiPadでの高速なタブの切り替え機能などが注目だ。

 「Reading List」の機能はデバイスを超えて共有されるので、朝食を食べながらiPadで登録しておいたReading Listの記事を、電車の中でiPhoneで読む、といった使い方もできる。また、気になった記事は、URLだけでなく本文の中身も込みでメール送信する機能も用意される。

 新Safariで、なんといっても興味深いのはこのReading Listだろう。この部分もAPIとして共有され、例えばソーシャルブックマークで人気の記事を登録することも可能になるのか、もしそうなった場合は、Read It LaterやInstaPaperといった同等の機能を提供して来た独立系サービスに生き残る道はあるのかといった動向にも注目したい。

モバイル機器ブラウザでトップシェアを持つSafari。“後で読む”を実現したReading Listが見どころ

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