「iOS」は繊細な軌道修正でさらなる発展を目指すWWDC 2011基調講演リポート(3)(3/4 ページ)

» 2011年06月08日 12時43分 公開
[林信行,ITmedia]

5、「Reminders」

位置情報とも連動するリマインダ機能

 5つめは唐突に追加されたReminder機能だ。“やらなくてはならないことを思い出させてくれる”この機能に、筆者は特別な思い入れがある。

 なぜなら筆者はさまざまな講演の場で、「情報過多の時代に入った今、むしろ重要なのは情報の絞り込み」と説き、最も効果のある情報絞り込み手段として時間を使った絞り込み、人に関連した絞り込み、そして空間を使った絞り込みがある、と説明してきたからだ(この辺りの話はアスペクト刊の「iPhoneとツイッターはなぜ成功したのか」や日経BP刊の「Twitterの衝撃」に書いている)。

 iPhone、iPad用アプリケーションにおいて、最も競争が激しく、決定打のないジャンルがTo Doリストの管理だろう。To Doリストの最大の問題は(RSSリーダー同様)、情報がどんどん蓄積され、その量に圧倒されてしまうことだ。画面いっぱいに表示される「やらなければならないこと」や、3ケタを超える未読記事の数字によって、これらのアプリケーションは逆に何の意味も持たなくなってしまう。

 Remindersは、このTo Doリストを日付別に管理し、さらに位置情報を使って絞り込むことも可能にした。位置情報をどう使うかというと、例えば、次にスーパーに行ったタイミングでミルクを買うことを思い出させる、といった具合だ。

 これに似た機能を真っ先に搭載していたのは、「OmniFocus」というアプリケーションだったが、使い方にクセがあり一般向けでないうえに、位置情報の登録が面倒で使い勝手が悪かった。最近では位置情報サービスの「Foursquare」も、場所に対してTo Doリストを残す機能を提供しているが、これは自分向けのメモというよりも、「ここへ来たら、〜〜をするのがお勧め」といった情報を仲間と共有するのが主眼になっている。

 位置情報で絞り込むことで情報量を減らした点でも、OS標準機能として用意されたことでも、Remindersはかなり有望なTo Do機能になるのではないかと思う。

6、「Camera」

iPhoneがロック状態でも即座に撮影できる

 間もなく巨大写真共有サイト「Flickr」で、最も写真投稿数が多いカメラのトップの座にiPhoneが君臨する。この世界でも最も使われているカメラ――iPhoneのカメラ機能がiOS 5では一気に進化する。

 1つはロック画面からのカメラ起動だ。何か決定的瞬間を撮ろうと思ったとき、iPhoneがロックされていて、ロックを解除して、そこからカメラを起動して……といった操作をしていると、間に合わないかもしれない。そこでiOS 5では、ロック画面のスライダの横に新たに追加されたカメラアイコンをタップすることで、ロック画面の状態からでも即座にカメラが起動して撮影可能にした。アクセスコード(暗号コード)を設定している場合は、撮影が可能なだけで、ほかの写真が閲覧できないなど、セキュリティ面も考えられている。

 これに加えて、iPhoneのボリュームボタンをシャッター替わりに使う機能や、ピンチ操作でズームをする機能も搭載した。また、グリッドを表示して撮影時に水平を取ったり、被写体を長押しすることでフォーカスや露出をロックするといった、まるで本格的なデジタルカメラのような機能も備えている

 さらに「写真」アプリには、簡単な写真加工の機能が用意された。切り取りや回転、ボタンを押すだけでどんなパターンの写真かを自動判別し、最適な補正をかけてくれるiPhotoの人気機能「自動補正」の搭載、さらに赤目補正なども搭載される。これらの新機能によって、Twitterに写真を投稿するために、いくつものアプリケーションを開いて補正を繰り返す必要はなくなりそうだ。

露出やフォーカスのロック、グリッド表示といった本格的なカメラ機能が追加されるとともに、赤目補正などの編集機能も備える

7、「Mail」

 新しい「Mail」では、太字やイタリックなどの文字装飾が可能なリッチテキストでのメール作成や、後で読み返したいメールにフラグを付ける機能、ToやCC、Bccに書かれた宛先項目をドラッグして移動する機能、メール本文を検索する機能に加え、S/MIMEなど企業向けメールシステムへの対応も強化される。

 同機能のデモ中には、これまでiBookで利用されていた辞書を参照する機能が、システム標準で、どのアプリケーションからでも(そのように開発されれば)利用可能になったことも紹介された。もし英文メールの中に分からない単語があれば、この機能を使って調べることができる(英英辞典だが)。

 辞書や辞典の内蔵というのは、スティーブ・ジョブズ氏が、アップルを退社してネクストを設立したときからこだわっていた機能で、ネクストのコンピューターもウェブスター百科事典など、いくつかの辞典を内蔵していた。何か新しい言葉に遭遇したり、自分が使おうとしている言葉に自信がなかったら、コンピューターの得意な検索機能を使って、すぐにその場で調べる、というのが非常に理にかなったスタイルだからだろう。

 現在のMac OS Xも、日本語環境では大辞泉、プログレッシブ英和・和英中辞典、類語例会辞典などが参照可能になっている。そう考えると、いずれiPhoneやiPadにも、これらが搭載される日が来るのかもしれない。

 Mailの紹介ではもう1つ、iPad用の新しいソフトウェアキーボードが紹介された。中央から左右にパックリ2つに割れたキーボードで、画面の好きな位置にドラッグして使うことができるようだ。また、要望の多いiPad用フリック入力のキーボードも登場が期待できるかもしれない。

新Mailでは、リッチテキストでのメール作成や、本文検索機能などが追加される

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