なぜ被災者を受け入れたのか? 新潟県三条市の市長に聞く相場英雄の時事日想(4/4 ページ)

» 2011年06月16日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
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前例がない事案

――今回の事案は前例がないはず。どのように動いたのか?

 人間にサービスするのが行政であり、人間とおつき合いするのも行政だと常々考えている。大震災に接し、我々のように被災していない立場としてなにができるのかと言えば、困ったときはお互いさま、ということだ。

 大洪水を経験していたからこそ、支援するという行為のハードルをもう少し低くすることができるのではないかと考えた。

 県や国にうかがいを立てるということではなく、「ご恩返し」と「困ったときはお互いさま」を愚直に、迅速に実践するしかないと思った。

 市長としての考えを庁議にかけたが、全く反論がなかった。「7・13」をほぼ全ての職員が経験したので、「当たり前」という雰囲気だった。

 たった1日で避難所を設営できたことをほめられる機会があるが、自分たちは過去に避難所運営を経験した。加えて、中越大震災を経てそのたびに避難所運営のお手伝いに出た。避難所の設営・運営に対する躊躇(ちゅうちょ)がないし、垣根が低い。「住民票の写しをください」と同程度の感覚、ハードルの低さだ。

「お役所仕事」という言葉

 「お役所仕事」という言葉がある。今さら説明する必要はないだろうが、杓子定規で、融通がきかないという意味だ。長年、中央の経済官庁の取材を経験した筆者にとって、「お役所仕事」という言葉は、保身、縄張り、足の引っ張り合いなど、ネガティブなイメージしかなかった。

 今回、郷里の街を取材し、お役所仕事という言葉が持つネガティブなイメージが変わった。日頃、市民と直に接している行政体だけに、災害発生時のような非常事態ではお役所仕事は命を守る役割を担うのだ。

 次回は、國定市長が抱く震災や国会、東電への率直な思いを聞く。

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