東京電力福島第1原発の事故を受け、多くの人は「原発は怖い」と感じているだろう。しかし原発で働く労働者の実態はあまり知られていない。
“宇宙服”のような作業着を着て、マスクをする労働者たちは、一体どんな仕事をしているのだろうか。38年間、原発を追い続けてきた報道写真家の樋口健二氏が、労働者の実態を語った。
高度経済成長期、日本はものすごい勢いで成長していった。しかしその一方で、公害問題が起きていた。海も、空も、あらゆるところを汚しまくっていた。私は四日市などで公害問題を取材していたが、「もうこれでやめよう」と思っていた。ところが、日本中に公害があることが分かった。そして公害問題を追いかけていくうちに、原発にたどりついたのだ。
私は、原発というのは「公害の扱いにしなければいけない」と思っている。なぜ公害の扱いにしなければいけないかというと、原発で働く労働者が救われないからだ。
1989年4月1日までは「原発労働者に1日1ミリシーベルト以上あびさせてはいけない」ということになっていた。また3カ月で30ミリシーベルト以下としていた。しかし閣議で「年間被ばく線量の限度は50ミリシーベルト」と決まった。私は労働者を150人ほど取材してきたが、50ミリに達した人はほとんどいなかった。それでも健康被害に苦しんでいる人はたくさんいるのだ。
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