アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。
本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」に2010年07月12日に掲載されたコラムを、加筆修正したものです。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所で読むことができます。
「GDrive」をご存知だろうか? Googleが提供すると何度も噂になっているネットドライブで、ちょうどDropboxのようなものと考えていいだろう(参照記事)。2006年3月のアナリスト向けの配布資料の中に、これについての説明が紛れ込んでいて話題となり、「どのくらいのインパクトがあるのか、Googleが試したのではないか」などと言われた。
GDriveは、「無限の記憶容量」を提供する点が最大の特徴とされるが、我々はそれを少し違った形で、すでに手に入れているのかもしれない。
6月末のある日、Google AndroidエバンジェリストのAさんから招待が来て、「Google+」(参照記事)のテストサービスを使いはじめた。Google+が成功するか否かについては、まだあまり議論もされていないが(あれが足りない、これが使えないという議論はなされている)、何か新しいコンピューティングのはじまりを感じさせるものがあると思う。
Google+を使って最初に驚いたのは、Galaxy Tabで撮影した写真が、いつのまにかGoogle+にアップロードされていたことだ。Google+をAndroidアプリで使うようになると、あなたのスマートフォンに、Eye-Fi(デジカメで撮影した写真を自動的にクラウドにアップロードする無線LAN付きSDカード、参照記事)が装備されたような感覚になる。
例えば、神楽坂の「新東記」というシンガポール料理屋で「肉骨茶」という料理の写真をGalaxy Tabで撮影したとする。すると、何ら余分な操作をすることなく、Google+の「写真」(その正体はPicasaなのだが)に、ほどなく登録されるのである。PCで電子本を買ったら、いつの間にか自分のKindleに本が入っているという、Amazonの「Whispernet」の感覚にも似ている(参照記事)。
Androidは、すでに「Google+のエコシステムの一部」になっているのだ。
しかも、Google+では2048×2048ピクセル以下の画像を、無制限にアップロードできる。明らかに「写真」がとても便利に使えるようになっていて、この部分に関しては、「Google+はPicasaのソーシャル化である」といってもあながち間違ってはいないだろう。サークルに入れた友人たちのアップした写真を、「写真」メニューでまとめて見られるのも、新しい体験である。ちょっと構造は異なるが、写真版のPaper.li(参照記事)ともいえる、サマリー閲覧機能である。
この「写真」という話でいうと、Facebookは写真で成功したWeb企業だと思う。Facebookはその名のとおり、“顔写真”が出ているところを最大の価値としてスタートした。「顔」があるから仕事の話もできるし、知り合いを発見できるし、自分の付き合いやすい人間か否かを判断できる材料になったりする。「顔」という最大の「表現媒体」を使ったところが、Facebookが成功した理由の1つだろう。
その意味では、Google+の「写真」が使いやすいというのは、賢い戦略だと思う。
Copyright© ASCII MEDIA WORKS. All rights reserved.
Special
PR注目記事ランキング