はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。
※本記事は、「Chikirinの日記」において、2006年3月22日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。
経営者や役者など、さまざまな分野で一流の成果を残した人が自身のキャリアを振り返って書いている回想録などを読むと、「鶏口牛後」の大切さを感じることがよくあります。
「若いころ、希望していたキャリアは得られず、まったく異なる道を進むことになった」とか「当時はお荷物とされていた部門に配属になった」などと振り返る人が少なくないからです。
世の中には、いい仕事をしながら成長を続ける20〜30代の人はたくさんいますが、40〜50代に入るとそういった人は大きく減ってしまいます。大企業に入っても、経営者になるのはごく一部だからです。
経営者になれない人も、終身雇用下では定年までずっと何らかの仕事を割り当てられますが、必ずしもやりがいを感じられる仕事とは限りません。
じゃあ、それが不満で会社を辞められるかといえば、給与は仕事の対価ではなく「その組織に所属していた期間」に比例しているため、「転職したら年収は半分」ということもあり、容易には動けません。このため、40代半ばで仕事へのモチベーションを失い、“流す仕事”を始めたり、「仕事より家庭が大事だと気が付いた」と言い出したりする人が現われます。
一方、40〜50代で「お〜、輝いてますね!」という働きをしている人が若いころからずっと王道を歩いてきたのか、というとそうでもありません。
全然勉強していなくて留年したとか、一流大学卒ではなかったなどの理由で、さらには家庭の事情や何らかの就職差別のために、意に沿わない仕事に付かざるをえなかった人もいます。
ところが、そういう人の中には環境の整った大組織に入れず、それがためにむしろ若いころから歯車の1つとしてではなく、「リーダー」として仕事をすることになる人もいます。恵まれていなかったからこそ、「鶏口」として仕事をする機会を得るのです。
そして、鶏口の立場で必死で働くと、(ライバルの少なさもあって)若くても「お前が一番前を走ってみろ」と言われ、それに努力と能力で応えることができると、どんどん面白い世界が広がっていった。そういうパターンの人も世の中には結構いるのです。
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