FacebookとGoogle+に見る友達関係150人限界説遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(1/2 ページ)

» 2011年07月28日 19時25分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]

「遠藤諭の『コンテンツ消費とデジタル』論」とは?

 アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

 本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」に2010年07月26日に掲載されたコラムを、加筆修正したものです。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所で読むことができます。


 気のおけない友人関係は、150人までが限界だという話がある。

 『友達の数は何人? ――ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン・ダンバー著、藤井留美訳、インターシフト刊。原題は『How Many Friends Does One Person Need?』)によると、この数はFacebookやMySpaceが盛んな現在でも変わらないという。それは、脳の「大脳新皮質」の大きさによって決まってくるのだそうだ。

 FacebookやMySpaceでの友達の数も、だいたいこの平均150人の範囲に収まり、200人以上友達がいるという人はほんの一握りだという。

 もちろん、人間にはさまざまな規模の集団があって、たとえば狩猟・採集社会では、30〜50人程度の集団が形成される。一方で、部族全体の規模は500〜2500人程度にもなるが、その中間に「クラン」(clan=氏族)という集団がある。狩猟場や水源の共有などはクラン単位で行われ、これの統計的な平均は150人になるという。

 こうした人のネットワークの規模は、3倍の数で同心円的に大きな集団になるとも論じられている。いちばん内側が3〜5人の特に親しい友人で、何かあったらすぐ駆けつけてくれるような関係。それが段階を踏むに従って、5→15→50→150といった人数になる。

Google+は「うわさ話」、Facebookは「告白」!?

 Googleが新しく始めたSNS「Google+」のテスト運用が始まって、あっという間に全世界で2000万人以上が登録、利用している。世界で7億5000万人という会員を擁するFacebookと、このGoogle+との戦いは、いまネットの世界の最大の関心事といっていい。この2つのサービスにはどんな違いがあり、この戦いというのはどんな意味を持つのだろうか?

 GoogleもアピールしているFacebookとの違いは、「サークル」という概念があることだ。Facebookには「友達」という1つのつながりの概念しかなく、友達であるか否かは完全にオン/オフで表現される。「友達かもしれない」というあいまいな状態がないため、米国では一時期、「Unfriend」(友達解除)という言葉が話題になった。

 それに対して、Google+は、ネット上の友達や知り合いをサークルに振り分けるという発想だ。「Google+ってどう使ったらいいか分からない」という声も聞くが、ただの友達仕分けツールなのだと考えると分かりやすい。ちなみに前回のコラムでは「Google+はクラウド時代のトモダチコレクションなのか?」などと書いた(参照記事)

 友達をそれぞれのサークルに振り分けることで、個々のサークルに向けて発言したり、会話のストリームを眺めたりできるようになる。現実のサークルと混同しそうになるが、まったく異なるのは、他人のGoogle+において、自分がどんな名前のサークルに誰と一緒に扱われているのかは見えないことだ。Google+のサークルは、各人のご都合主義がぶつかり合わない、うまい具合のソーシャルグラフになっている。

 一方、Facebookで「〜さんからからFacebookの友達リクエストが届いています」とくると、ちょっぴり緊張が走る。「〜さんがGoogle+であなたを追加しました」は、そこまでの緊迫感はない。Facebookが改まって「付き合ってください」と告白される感覚であるのに対して、Google+は「うわさ話をされた」というくらいの違いがある。

Google+の「サークル」画面。デフォルトで用意されているのは「友だち」「知人」「フォロー中」「家族・親戚」の4つ。Google+で「家族・親戚」をフォローというのは、日本ではあまりないのではないか

 ところで、Google+には、あらかじめ4つのサークルが用意されている。はじめてアクセスしたときに「おやっ?」と思われた人もいると思う。「友だち」「知人」「フォロー中」「家族・親戚」の文字通り“サークル”が画面に現れる。これは、ちょうど『友達の数は何人?』の著者である進化心理学者のいう、友達、知人、あるいはクランなどの集団があてはまるのだろうか?

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