“上司の犬”になる前に心得ておきたいこと吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年07月29日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 会社員をしていると、上司の発言や指示を「正しい」と思い込む。「何かがおかしい」と感じつつも、堂々とそれが言える社員はほとんどいない。そんなことをすると、人事評価で低くつけられたり、他部署へ追い出されかねない。

 このような組織に長くいると、次第に思考や考え方、意識も「上司や会社の上層部は正しい」と思い込む。新人であっても、半年もすると、大多数の人は上司の言いなりになる。1年もすると、考え方だけは立派な会社員になっている。

 私は「それでいいのか」と問題を提起するような青臭いことはしない。むしろ、会社で生き抜こうとするならば、「上司の犬になれ!」とエールを贈りたい。上司は、部下の人事権を握っている。生かすことも殺すこともできる。ただし、同じ犬になるのでも、せめて次の5つのことは心得ておきたい。

賢い犬になるために心得ておくこと

1.上司の発言の真意を見抜こうとせよ

2.上司も「利権」の中で動いている

3.「絶対に正しいは存在しない」を心の片隅に

4.しょせん「上司」でしかない

5.頼りになるのは自分だけ

 1であるが、私が観察しているとこれを心得ている人は少ない。上司が発言する時には、その裏に意図がある。それを見抜くのは難しいが、少しでも見破ろうとすることが大切だ。それにより、上司の発言に必要以上に気を使わないで済む。こうすると、心が安定してくる。心が安定していないと、いい仕事などできない。

 30代半ばまでくらいは仕事がほかの人よりもできなくて、辞めていく可能性は低い。むしろ、「自分は上司と合わない」とか「認められていない」と自虐的になり、浮いた存在になり、辞表を出すというパターンが多い。正確に言えば、勝手にそのように思い込み、辞めていくように見える。また、自虐的になるように仕向けてくる上司もいる。だからこそ、上司の発言に過敏に反応しないことが大切だ。

 上司の立場からすると、自らの発言に敏感に反応する部下たちがいると、優越感を感じるものなのだ。「俺はこの部署を仕切っている」という具合に。職位が上の人が下の人の前で大きなことを話したり、機嫌を悪くするのもこのような心理、つまり、優越感を感じたいからなのだろうと私は思う。これが、人間の性というもの。

 上司の発言の真意を見抜くとは、例えば、私が20代後半のころに経験したことをもとに考えたい。そのころ、上司が「君は精算が遅れたな」と大きな声を出して注意した。私は「なぜ、わざわざ大きな声で……」と逆恨みをした。これがエスカレートすると、大体、上司との関係が悪くなる。そして、「俺はダメだ」と自虐的になる。

 私は、上司の意図を探ろうとした。「大きな声で叱るのは、他の部員にも精算が遅れないことを呼びかけるためだな」。その部署は女性が多く、上司は彼女たちに遠慮をしていた。叱るときはあったが、言い返されると困った表情になっていた。だから、数少ない男性で、一番若かった自分が“叱られ役”になる。少なくとも、そのように受け止めた。

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