「恋をしましょう」――オヤジを誘うBEAMSポスターのナゾそれゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2011年09月14日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年8月26日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 「恋をしましょう」は、BEAMSが全ブランドを横断して展開する創業35周年キャンペーンである。「KOIWEB」という専用サイトを作って、女優・蒼井優が歌って踊る「恋をしましょう体操」の動画を公開しているほか、素朴な少女の姿を描いた写真集『未来ちゃん』で人々の心をとらえた写真家・川島小鳥が8組のカップルの姿を写し撮ったアルバムも掲載。また、FacebookとTwitterに連動したアプリ、「koi sensor」では、周りの人との“恋の可能性”を分析できる。盛りだくさんで贅沢なサイトだ。

 そのキャンペーンメッセージとWEBサイトを告知するポスターが各駅に掲出されている。その1つが、新橋駅の烏森口改札を出て右側の壁面に登場した。

 ローカルな話題なので少々説明をしよう。鳥森口は、ほろ酔いのお父さんたちがテレビのインタビューを受けることで有名な「SL広場」から、山手線・京浜東北線ホームの前後反対側に位置する。改札を出て左に進めば日テレなどもある汐留・シオサイトに行き着くが、右に出れば、細々とした飲み屋がひしめくディープなゾーンへと続く。

 オシャレなポスターは、シオサイトに向かう人の注目を集めようとしているのかといえば、そうではない気がする。確かに改札で待ち合わせをしている人の目には多少入るが、メインの導線上ではない。そんな場所にBEAMSのポスターが掲出されたのだ。しかも「恋をしましょう」である。

 BEAMSは1976年、東京・原宿に創業。欧米に出かけては、自らの目利きで選んできた服を店に並べ、流行やライフスタイルを発信する。いわゆるセレクトショップの草分け的存在だ。半年後にはカリフォルニアの若者のライフスタイルを特集した男性誌『ポパイ』が誕生するなど、時代の後押しもあって、いまや売上高約500億円の企業にまで成長した。

 BEAMSが稀有な存在として語られるのは、そのたたずまいにある。時代の最先端を提示しては次々とつぶれていくアパレル業界を片目に、常に時代の「半歩先」をリードする絶妙な距離感を保ちながら、徐々に業態を拡大してきた。当時からのファンを顧客として囲い込みながら、新たな若い顧客を取り込んでいる。親子2世代のファンも多いという。

 それが今、なぜオヤジの聖地「新橋」で、「恋」なのか。

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