地球ぐるみでモノを作る「パーソナル・ファブリケーション」、ネットでいえば何年?遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/4 ページ)

» 2011年10月20日 12時22分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]

パーソナル・ファブリケーションはいま、ネットでいえば「1992年頃」

FabLab鎌倉2Fの工作室。まるで屋根裏部屋かガレージといったようなたたずまいを備えている

 9月21日、台風15号に正面から向き合うようにして、私はJR横須賀線久里浜行きに乗っていた。慶應義塾大学SFC環境情報学部の田中浩也准教授を「FabLab(ファブラボ)鎌倉」に訪ねるためだ。

 FabLab鎌倉を訪ねたのは、私が司会をさせてもらう「次世代コンテンツ技術展(ConTEX)2011」でのシンポジウム「『ソーシャルコンテンツ』大爆発」(10月22日開催)の下打ち合わせのためである。岐阜県立国際情報科学学術アカデミー(IAMAS)の小林茂准教授は台風のために来られず、Skypeで打ち合わせに参加。なお、当日は株式会社チームラボの猪子寿之氏も登壇する。

 このFabLab鎌倉では、田中氏らは「パーソナル・ファブリケーション」に取り組んでいる。生活の中のあらゆるものを自分で作ろうというもので、そのための3Dプリンターやレーザーカッターなどの道具を用意した共有工房ともいうべき場所が、「FabLab」である。

3Dプリンター。写真は、約10万円と個人でも入手可能な組み立て式の「Thing-O-Matic」。ノズルから溶かしたプラスチックを吹き出し、それを積み上げて形を作っていく。詳細は「約10万円の激安3Dプリンター『Thing-O-Matic』」記事を参照(Photo:makerbot CC BY-SA)

 3Dプリンターというのは、3次元のCADデータを用意すると、樹脂を積層してそのまま物理的な造形を作ってしまう機械である。まるでアシナガバチが木の繊維と唾液を固めて美しいハニカム構造を作るように、精巧な3次元モデルを作ることができる。そんな3Dプリンターが、いまはザッと十数社から発売されていて、個人でも導入可能なところまできているそうだ。

「手作り」の世界が、テクノロジーによって様変わりしているわけなのだが、それだけならいままでだって道具の進化はあった。日曜大工は言うに及ばず、自分で何かを工作するという話は、何もいま始まった話ではない。それでは何が新しいのかといえば、それはネットの力だ。

 「FabLab」の詳しい内容はWebサイトをご覧になっていただくとして、いまや十数カ国、60カ所にあるFabLabが、ネットワークとして活動しているという。例えば、テーブルを作りたいといったときのノウハウやアイデアなどは、いままでは誰かに直接習うか、本で勉強するしかなかった。それが、ネットできわめて活発に共有できるようになる。

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