震災後、価値観はどう変わった? 鈴木謙介さんが語る(1/4 ページ)

» 2011年10月27日 12時09分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 東日本大震災後、「自分の価値観がなんとなく変わった」という人も多いのではないだろうか。しかし「具体的にはどんなこと?」と聞かれると、うまく答えられない人もいるはずだ。

 大震災から半年以上が経過したが、日本人の価値観はどのように変化しているのか。シタシオンジャパンが行った調査結果※を基に、関西学院大学社会学部の鈴木謙介准教授が分析。その結果、「社会性のベクトルを表わす4つのキーワードが浮かび上がった」(鈴木氏)という。そのキーワードとともに、価値観がどのように変化したのかを紹介していこう。

※インターネットによる調査で、20〜60代の男女1万人が回答した。調査期間は9月10日から12日まで。

他者への貢献

関西学院大学社会学部の鈴木謙介准教授

 震災後、日々の生活シーンにおいて、対人関係の考え方にどのような変化が生まれているのだろうか。74.3%の人が「人との出会いやつながりを大事にしていきたい」と回答。また「他者への思いやり」や「助け合い」を求める声も多く、社会全体が協力していく姿勢がうかがえた。さらに「見知らぬ他人であっても、機会があれば協力して生きていきたい」という人は60.4%。家族や友人に限らず、見知らぬ他人ともかかわりを持ちたいという人が6割を超えた。

 全体的に社会的なコミュニティやネットワークを重視する傾向がうかがえたが、「社会や他者を支援するためには、自己犠牲の精神が大事」という人は32.4%にとどまった。一方で「社会貢献や協力は、自分の範囲で行えばよい」(77.6%)という人は7割を超えており、身近なところで自分ができることからやっていきたいという人が目立った。

 この結果を受け、鈴木氏は「他者への貢献」というキーワードが浮かび上がったという。「『他者への貢献』と聞いて、そんなことは『当たり前じゃないか』と思う人も多いかもしれない。しかし『見知らぬ他人』でも声をかけたり・かけられたりすることに“抵抗”があまりないこと、に注目したい。

 震災直後、首都圏の街は帰宅難民の人で溢れた。しかし『こっちに暖かいお茶がありますよ』『バス停はこちらですよ』と見知らぬ人に声をかけあう光景があちこちで見られた。これまで見知らぬ人に声をかける・かけられるというのは、どちらかというと“避けたい”ことだった。なぜならその行為には危険が伴うから。それでも多くの人が『機会があれば……』と答えたのは、意識の変化があるからではないか」と分析した。

 また「貢献」というイメージについても、変化がうかがえた。「貢献」といえば自己犠牲が伴うことを想像しがちだが、8割近くの人が「自分のかかわれる範囲で、手助けをしていきたい」と回答。あまり無理をせず、自分のできることであれば……といったスタンスで協力したい人が多いようだ。

社会・他者への協力に取り組むスタンス、無理をしないという人が多い
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