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» 2011年10月28日 02時10分 公開

「分からないものが一番いい」――秋元康氏のAKB48プロデュース術(6/7 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

AKBは納豆のようなもの

河口 今聞いていると、少女時代みたいに画一的な路線で厳しくある世界と比べて、秋元さんは個人個人の多様性を逆に大事にしているので、お客さまから見たら逆に飽きにくいのではないかと思います。その辺はどうですか。

秋元 いろんな鍋で煮込んでいるスープのようなもので、いろんなダシが出ているので、だから、同じAKB48はないですよね。「今日はこんな感じなんだ」とか。

 K-POP、少女時代とかのすごさは、いつどんな時に飲んでも同じ味のクオリティを保てるというところなんです。それはそれですばらしい。

 AKBの面白さは「今日しょっぱくない?」とか「今日おかしいよこれ」というのも含めて、毎日飲んでいただけたらなと思うところなんですよ。

 よく「AKBは海外に行けますか?」と聞かれるのですが、多分行けないと思うんです。そんなに簡単に成功しない。ただ、もし(日本のアーティストで)成功するとしたら、AKBだと思うんです。

 AKBはニューヨークとロスアンゼルスで公演したのですが(2010年7月)、初めの3曲ぐらいは米国のお客さまはどん引きですよ。「何でこんなに歌が下手で、何でダンスがこんなに下手なんだろう? 何しに来たんだこの子たちは」と。でも、4曲目くらいから、なぜか盛り上がってくるんです。つまり歌やダンスではない、何か持っている熱気と一生懸命さなんです。だから、これは勝機があるような気がするんです。

 僕らの世代は欧米に憧れて、欧米の音楽や映画、ファッションを真似てきたんです。だから、そっちを目指しても、本場の人からすると「東洋人がそんなことをやって」となります。

西村 真似は絶対その人を超えることができませんからね。

秋元 そうなんです。でも、僕らは憧れていたから、映画でも、ミュージカルでも、音楽でもそういうものがやりたかったんです。でもそれはことごとく、日本人がやったって相手にしてくれないという仕打ちを受けてきたんですよね。

 でも、ここにきて、もともとは例えばホラーブームですね。『リング』『呪怨』『着信アリ』のハリウッド版リメイクが出たりしたのですが、ああいう日本にしかない怨念みたいなものがうけたわけじゃないですか。日本にしかないものが今、いいんじゃないかと。

 それでいうとAKBは納豆のようなもので、納豆を輸出する時に、「いや、外国人にはこの匂いは無理だよ。じゃあ匂いをちょっと消すようなものにしましょう」とか「このねばりはダメだよ」とか、そういうことを全部削って、欧米のライフスタイルにあるように「これとチーズを合わせるといい」みたいなことを、みなさんは違うかもしれないですが、僕はそういう反省があって、そういうことをやったのですが、それだったら納豆を食べないでしょ。

 なので、「AKBは歌が下手ですよ」と。でも、納豆のまま、「これ分からないとダメだよね」と言いながら、我々日本人は秋葉原を中心としておいしく納豆を食べているんです。その納豆の映像をYouTubeなどで、みんな見ていくと、だんだんみんな「納豆おいしいんじゃないか」という状況になってくる。だから、僕は今、日本はもっと自信を持ってこういうものがうけるんだと(出した方がいい)。つまり、マーケティングしない方がいい。マーケティングすると、そのマーケティングに負けちゃう。やってみなきゃ分からないという方が多分いいんじゃないかなと思いますね。

YouTubeのAKB48チャンネル

河口 今、納豆の話だけど、しかも同じ納豆じゃないんだよね。小粒納豆から、粘着のある納豆まで混ざっているから。これが敵だった場合は攻撃しにくいんですよね。

秋元 それに真似しにくいんですよね。AKBと同じようなものはネットで調べていただくと分かるのですが、あちこちにあるんですよ。いろんな国にパクリがある。でも、それはパクリというか、女の子がただ歌って踊ったらそれはパクリかというと、そうじゃないじゃないですか。だからあちこちにあるんです。

 ただ、ファンのみなさんたちとどういう風にコミュニケーションをとっていくかが難しくて、できないんです。先ほど申し上げたように、総選挙で盛り上がった、よし次はじゃんけん大会だという、ここが一番面白いところなんですよね。だから、形だけ真似してもオペレーションというか、それができる強力な人がいないと面白くないと思うんですよね。

河口 欧米にもないようなそれぞれ違う納豆的なものが集まって、強力な布陣を敷いていると。そうすると、その中に色彩というものが出てくると思うのですが。

秋元 多分いろんな色を使っていると思います。色っていうのは単純な色彩ではなくて、女子高生の化学反応というのがあって、女子高生って1人を見て「すごいかわいいな」と思っても、それほどエネルギーを感じないんです。でも、3人、4人と固まるとすごいエネルギーを持ち始めるんです。

 それはAKB48でもそうです。AKB48はよく「ひとりひとりってそんなにかわいくないですよね」と、「君、失礼だな」と思いながらも聞くのですが、固まると何かすごくかわいく見えるんです。ある種の乱反射みたいなところがあると思います。

河口 5人、10人、20人のグループと廊下ですれ違うと、大学の先生とかおびえるんですよね。グループの威圧感というか。

秋元 何か数の強さみたいなことはあるでしょうね。

 でも、それは(良いところと悪いところ)両方ありますよ。みんなで神輿をかついで「わっしょいわっしょい」と言っているけど、全然持っていない人がいる一方、すごく肩に食いこんでいて、この子限界なぐらい持っているなとか。

 そういうことも含めて、その人間ドラマじゃないかと思うんですよね。そこに多分ファンのみなさんや、たまたまAKBを知った方が何となく自分の中の面白かったことに気付いていただけるんじゃないかと思うんですよね。

河口 個人差に許容範囲を持っているということは、成長する潜在的な力も個人によって違うと思うので、どんどん伸びていく子と、行き詰まってもう伸びないという子がいるんじゃないですか。

秋元 よくメンバーに「ベランダに置いた鉢植えなんだ」と言います。光が当たっているところもあれば、当たらないところもあると。総選挙なのか、じゃんけん大会なのか、全然関係ないところでも、鉢植えを変えて、どこかで日が当たるようにしたいと。それをチャンスの順番、「チャンスには順番があるんだ」ということを言っているんです。

河口 鉢植えの花が枯れ始めているので、栄養剤とかで元気づけるといった気遣いもあるんじゃないですか。

秋元 そこまでじゃないかもしれないですね。ポップコーンみたいに一生懸命僕がフライパンを動かして、できるだけ1つでも多くはじけてくれたらいいなという。でも、一生懸命やっているんだけどはじけないので、どうするかなというのも中にはあるかもしれないですね。

河口 今、聞いていると、美空ひばりのころと、今のAKB48と全然育て方や接し方が違いますよね。

秋元 多分、同じなんだと思うんです。同じなんだけども、少女時代も美空ひばりさんもそうですが、(デビューするまでの)アンダーグラウンドなところが今まで見えなかったんです。才能のある人たちがデビューしているから光り輝いているのであって、AKBはもっと下のところのまだデビュー前のレッスン風景を見せているような感じなんです。

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