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» 2011年10月28日 02時10分 公開

「分からないものが一番いい」――秋元康氏のAKB48プロデュース術(3/7 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

思いは伝わる

西村 AKB48のメンバーはどんどん増えていて、今ものすごい人数になっていると思います。その女の子たちにいろいろアドバイスしたりしないといけないと思うのですが、女の子の扱いはちょっと大変じゃないですか?

秋元 これは大変ですよね。「女子校の先生や校長先生とかは多分こういうことなんだろうなあ」と思いますね。まあ、それは大変ですよ。

西村 ちょっとしたことで、「誰かをひいきしている」だとか。

秋元 ひいきもありますが、「AKB48というのはそこも含めて何か面白いんだな」と思うのは、初めに集まった時はあいさつもできないような子たちなわけですね。リーダーもいなくて、年上がちょっと年下の面倒を見るくらい。でも、年上が卒業していったりすると、そこに自然にリーダーができて、そのリーダーによって統制がとれるようになって、夢を一緒に目指していくという。「人間は夢を持っていると、本当にまとまるんだな」と思いました。あれは彼女たちから教えられたことですね。

河口 飲み会や打ち上げの時に秋元さんが行った時と行かない時で彼女たちの様子はかなり異なるような気がするのですが、その辺は気を遣っています?

秋元 そうですね。クリスマスとか誕生会とか呼ばれたことないですよ。

河口 向こうからすると多分、来たら気を遣うんじゃないかな。

秋元 そうそう、煙たい……。でも、それは我々くらいの年齢になったら、気付かないといけないんだよ。僕らが若いころ、よく先輩に食事に連れて行ってもらって、「よし、この後二次会いくぞ」とか言われた時に「ああ、めんどくせえな」とか、「また、つかまった」とか思ったじゃないですか。それと同じことを我々も思われているので、AKB48のメンバーが何かするという時でも、あまりないですよ。

 ただ、思いは伝わりますよ。思いというのは「こういうことでこうなんだよ」と僕が夜中にだいたい2時間くらいもかけて、昔の携帯電話でいうと何ページにもわたるメールを書くんです。

西村 そんなに長いんですか。

秋元 長いです。年をとると、だんだんしつこくなってくるので。それと分かりやすくしないといけないと思ったので、「人間には人生で1度だけ全力でやらなきゃいけない時がある」といったことを一生懸命書くわけです。

 それは伝わるんです。伝わるのですが、僕は忙しい中、朝4時くらいから6時くらいまで2時間かけて書いたメールを送って、昼くらいに返事が来るんですよ。手のマーク1つですよ、「ラジャ」と。普通「ありがとうございます」とか「ここの部分がすごく胸に響きました」とか、そういうのあるじゃないですか。ないんですよ。「ラジャ」と、平成生まれの子たちは。

 じゃあ分かっていないのかというと、ちゃんと分かっているんですよね。つまり、何かそれこそデジタルなんですよ。「所有とは何か」ということが我々と変わってきていて、例えば、僕は昔からティッシュペーパーやトイレットペーパー、電球、電池とかは、いくつか買い置きがないと何か不安なんです。でも、かみさん(旧姓:高井麻巳子氏、1966年生まれの44歳)は一切そういうのはないんですよ。つまり、「そのスペースがいらない。コンビニ行けばいつでも買えるでしょ。そこのスペースを作ることの方が効率が悪い」と。妻と僕の間にはその差があるんです。

 そして、さらに今の子たちは本を捨てられるんですよ。しかも、ハードカバーを捨てられる。だけど、それは何かというと、ハードカバーを捨てられるということは、そこに書いてあることは全部読んだのであれば意味はない。同じように音楽配信にしても何にしても、パッケージとして所有することにまるで意味を感じていないです。

 でも、それがなるほどなと思ったことがありました。僕は映画のビデオやレーザーディスク、DVDを集めていて、1部屋分ぐらいになったんです。そのための専用の部屋を借りて、そこに大量にあるんです。

 事務所の若いやつに「悪いけど作品を分かりやすく分けてほしい」と言って、ずっとそれにアルバイト料を払っていたら、「よく考えたら、これがTSUTAYAなんだ」とある時思いました。うちに全部それを持ってこなくても、TSUTAYAやGEOなどに行けば、借りて来られるわけです。「持っているということの楽しみみたいなものはもういらないのかな。クラウドの世界になってきたのかな」という気がしますね。

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