「Made in Japan」が売れる!? アパレル企業の挑戦それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2011年11月16日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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プレミアムで戦う老舗靴下屋

 ベンチャー企業だけでない。

 靴下大手のタビオ。2011年3月31日付日経産業新聞の記事によると、「年内をメドに香港に直営店を出店し、その後、上海など他地域にも広げる方針。高品質でファッション性の高い靴下の需要が若者を中心に旺盛で、現地製の安価な商品と競争できると判断した」といい、「価格は平均的なファッションタイプの靴下で1000円程度を想定している。日本での販売価格の約1.5倍だが、高品質をアピールする。商品タグは日本円で表示するなど日本製を前面に打ち出す」という。

 タビオは上質なもの作りにこだわっていることで知られている。奈良県を中心に50近い協力工場で「日本製」を貫いており、最近では、原材料の綿花栽培にも取り組むなど、徹底している。創業者の越智直正氏は日本経済新聞のインタビューの中で、「最近、デフレ経済とか言われ、モノの値段がどんどん下がっています。価格破壊ではなく商品破壊です。日本の靴下製造技術は世界最高だと言われていたのに、海外の低価格で品質の良くない靴下に追いやられています。なんとしてでも品質を落とさずにコストを下げる努力をもっとしていかなくてはなりません」と話している。

 ここに来て、「Made in Japan」の付加価値が上がっていることには、一体どんな背景や意味があるのだろう。冒頭でも記したが、ラルフローレンやアバクロがどこの国で生産をしているか、確かめて購入している人はほとんどいないだろう。中国やインドネシアなど発展途上のアジアの消費者だけが、センシティブであるとも考えづらい。

 では日本という国の総体としてのイメージ。いわゆる「クール・ジャパン」的なものが影響しているのだろうか。これは有力な仮説に思える。トヨタやSONY、ユニクロなど大企業が蓄積してきた「良質なもの作り」のイメージの蓄積、そしてポップカルチャーが育んできた「クリエイティブ」でエッジの立ったソフトパワー。参考資料ではあるが、BBCが毎年行っている国別好感度調査で、日本はカナダ、ドイツ、英国に次いで4位にランクしている。

 経済学者のタイラー・コーエンが著書『創造的破壊』で記しているように、グローバル化は、良質なものをより安く買える選択肢と、浮いたお金で少し高いがプレミアム感の高い消費をする選択肢を同時に提供する。バリューチェーンをグローバルに最適化した多国籍企業が市場を切り開き、そこにニッチ市場も誕生、多様性に富んだ市場が次々と生まれていくというわけだ。これは発展途上国でも顕著になってきているのだろう。

 sgの例で見たように、Facebookを始めとした、新しいメディアの台頭で、今や巨額の宣伝費や時間を費やした現地調査をしなくとも、海外進出への道がひらけるようになっている。「日本」というプレミアム感を生かしたベンチャーの躍進が、これからも続くかもしれない。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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