求められるコミュニティ、避けられるコミュニティの違いとはちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2011年12月12日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
前のページへ 1|2       

入りたい共同体、入りたくない共同体の違い

 では、現代人が「逃げ出したい」と思った伝統的な共同体と、時間やお金を投資してまでも「手に入れたい」「入りたい」と思っている共同体は何が違うのでしょう?

 消滅しつつある伝統的な共同体の多くは、個人に参加・不参加の決定権がありません。そこでは、家族は家族であるという理由で一緒にご飯を食べることを求められ、同じ会社の社員であるという理由で日曜日に運動会に呼び出され、ご近所であるという理由で日曜日の草むしりに参加しろと言われます。

 一方、現代社会で求められているのは、「運動をしたい人だけが運動会に参加する」「草むしりのボランティアをしたい人だけがボランティアグループに入る」という、個人の参加意思を前提としたコミュニティです。

 行為としてはたとえ同じこと(例えば草むしり)をするのでも、「自分の時間をコミュニティのために犠牲にしているのではなく、自分の好きなことだからやっている」という前提が求められる。これが「敬遠されつつある共同体」と「求められている共同体」の違いです。

 ところが、共同体を成功裏に運営し続けるには、一定量の「個人の犠牲」が必要という点では、昔の共同体も今のコミュニティも同じです。

 どこでも、コミュニティの長(リーダー)は無報酬で相当の時間の投資を要請されますし、時にはくだらないもめごとに巻き込まれます。「共同体のために自分の時間を使い、嫌われる可能性も引き受ける」人がいないと、共同体は長期間にわたっては成り立ちえません。「楽しそうだから入りたい」「楽しくないから辞める」という人しかいないコミュニティは長続きせず、すぐに解体(自然消滅)してしまうのです。

 だからといってそこに「個々のメンバーが果たすべき責任」とか強い「共同体のルール」を求めてしまうと、それを「うざい」と感じる人が増え、最初は盛り上がって成立したコミュニティも、昔のコミュニティ同様に崩壊してしまいます。

 このため長く続くコミュニティの多くは、下記の2種類のいずれかの場合が多いように思われます。

1.フリーライダー(ただ乗りする人)が混ざり込まない、ごく少数の間だけは成立するケース(コミュニティの規模が大きくなると崩壊してしまう)

2.コミュニティの維持運営に相当の役割を担う「コミュニティリーダー」が仕事の大半を担ってくれる「個人主催コミュニティ」のケース。多くの場合、そうすることに商業的なメリットがある人がその役割を引き受ける

 本来は、すべての人が「テイクより少し多めにギブする」というのが共同体が成り立つ条件ですが、実際には多くの人が「ギブよりテイクの方が少しでも多いなら参加したい」と考えるため、多くのコミュニティの寿命はとても短いものになってしまうのです。

望まれる共同体作りは簡単なことではない

 「強制的に入れられた共同体から離れて、“個”を追求したい」という気持ちは多くの人が感じるものです。それを私たちは「自由に生きたい」と言ったり、「個の自立」「集団の束縛から逃れる」などとポジティブにとらえてきました。

 一方で、「つながりたい」「誰かに分かってほしい」「分かり合いたい」「仲間が欲しい」という強い欲求もまた消えることはありません。だから、解体された個人は必然として「新たな共同体」を探します。

 人間が社会的な存在であり、結局のところ「共同体」なしには生きられないというのなら、「昔の共同体を解体しなければよかったのではないか」とか「それらを再生すべきだ」などという議論もありますが、話はそんなに単純ではありません。

 参加・脱退の自由が個人全員に認められ、かつ、コミュニティの維持に必要なエネルギーを確保し続ける、という2つの条件を同時に充足することは、そんなに簡単なことでもないのです。

 そんじゃーね。

『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社刊)

ちきりんさんによる新刊『自分のアタマで考えよう』がこのほど発売されました。

「プロ野球の将来性」「結論が出ない会議の秘密」「少子化問題のゆくすえ」「婚活女子の判断基準」「消費者庁が生まれた真相」「就活で失敗しない方法」「自殺の最大の原因」など、社会問題や日常の疑問を考えながら、「ちきりん流・思考の11のルール」を分かりやすく解説しています。

 →Amazonのカスタマーレビューはこちら


著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

 →Chikirinの日記


関連キーワード

ちきりん


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.