なぜ橋下市長は「大阪都構想」を打ち上げたのかちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か(特別編・後編)(1/3 ページ)

» 2011年12月28日 08時03分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

2人のプロフィール:

ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

 →Chikirinの日記

 →中田宏さんと対談しました!(Chikirinの日記)

中田宏(なかた・ひろし)

衆議院議員(3期)を経て、平成14年に横浜市長に就任し2期務める。横浜市の累積借入金を約1兆円純減、ごみ排出量40%削減、市営地下鉄、市営バス、水道局の黒字化など数々の改革を通し市財政を再建。現在、青山学院大学院などの客員教授を務めながら、全国各地での講演活動や本の執筆など多方面で活躍中。

2011年10月に発売された政治の利権構造を赤裸々に綴った『政治家の殺し方』(幻冬舎)は、AMAZONのベストセラー1位を獲得するなど好評を博している。


ちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か・バックナンバー:

 →【第1回】大阪の未来はバラ色か? 橋下市長にふりかかる困難


なぜ大阪が「都」なのか

中田宏さん

中田:大阪市の新市長になられた橋下徹さんは「大阪都構想」を掲げています。しかし「なぜ大阪が『都』なの?」と疑問に感じられている人も多いのではないでしょうか。だって、東京都もさまざまな問題を抱えているわけですから。

 ある23区の区長はこのように言っていました。「東京の特別区は、一般の市よりも自由度や権限が少ない」と。だから都制度は「理想のシステム」とは言えないでしょう。それでも、大阪が都を目指すということは、ある意味で妥協なんですよ。

 なぜかというと、大阪市、名古屋市、横浜市のような特に巨大都市は府県との二重行政を止めなければいけない。大阪市、名古屋市、横浜市などは、日本の牽引役としての大都市だし、県に匹敵する行政能力があるからです。

ちきりん:よく分かります。大阪市、名古屋市、横浜市のような大きな市は、当然に自律的な行政運営をやりたがるわけで、その上に都道府県があると、2つのパワーが対立するか、棲み分けるか、しか方法がありません。

 対立すると何も進まなくなるし、棲み分けると「大阪府は大阪市以外の地域の担当」のようになってしまって、「大阪府全体の構想、戦略」を考えることができなくなります。とてもやりにくいシステムですよね。だからいっそのこと大きな市は都道府県のような扱いにしてしまえ、ということですね?

中田:そうです。府県からの権限を委譲して、特別市にしたほうがいいと思う。外国では特別市という形で、運営しているところがたくさんある。特に大阪市は企業がたくさん集まっているし、人口も多い。まっ先に特別市にするべきでしょうね。

 僕は横浜市長の時代に「特別市構想」を目指して、大阪市と名古屋市に呼びかけて3市による研究会を設けました。議論して結論も出した。ところが、その特別市を説明する時に「特別市とはどういう市なの?」という質問が出てきます。その答えは、概念として伝えられても、具体的に例示するのは至難です。一体、どの権限を委譲するのか。それに対して、府県はいくら予算を手放すのか。新しい制度だから、細かいことからすべて制度設計をしなければならない。

 当然、区議会を置かなければならないでしょう。ならば、定数はどうするのか。区長は公選にするのか、あるいは区議会議員から区長を選ぶというのはどうか。こうしたことをすべて設計しなければいけない。

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