なぜ橋下市長は「大阪都構想」を打ち上げたのかちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か(特別編・後編)(2/3 ページ)

» 2011年12月28日 08時03分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
ちきりんさん

ちきりん:確かにそれは難しい問題ですね。新しい体制にしたいと思っても、地方行政という複雑な仕組み全体をゼロから設計するのは膨大な作業ですよね。それをやっていたら、新しい体制に移行する前に何年もの検討期間が必要になってしまう。そう思うと、つくづく“明治維新”ってすごいことをしたんだな、と感心します。

 別の方法として、地方自治に詳しい研究員を抱えるシンクタンクや大学などが、そういったことを研究し「論点はどこにあるのか」「どういった変革案がありえるのか」などをまとめて発表してくれたらいいのに、とも思います。

 日々のオペレーションを担当している行政側が全部を設計していては、ものすごく時間がかかってしまうでしょ。元首長や、そういったことを研究している学者さんなどが長期的な視点で、組織論や政策について検討し提言する専門機関が必要にも思えます。

中田:それもありですね。でも「現状を変えたくない」という人たちにとっては、どんな案になろうが、絶対に反対する。シンクタンクがまとめたものでも、反対する。現状維持をしたいから。

ちきりん:確かにそうですね。それにしても、この「とにかく現状から何も変わりたくない!」という人の多いことには驚きます。そして彼らの「変わりたくないというエネルギー」の大きいことにも、いつもびっくりしています。

 私などは「変化こそ成長」「変ることこそ楽しみ」という感じで、ずっと同じ、ずっと変らないなんて退屈だしおもしろくないと思うのですけど、ホントに「とにかく同じがいい!」という人が多いですねー。

大阪都構想は「東京都のようなもの」

中田:現状を変えたくない人は少なからずいる。現状でなんとかなっている人たちにとって、自分からわざわざ「火中の栗を拾う」ようなことはしない。そういう人たちに対して、制度をイチから構築して、それを説明して理解を得ていくことは絶望的です。なぜなら制度をイチから作る段階で、「オレはこっちのほうがいい」「いや、オレはこっちのほうがいい」などと各論での反対は無数に出てきて、話がまとまらなくなるから。

 こうした現実を考慮して、橋下さんは現行の制度である「都」を持ち出したのではないでしょうか。

ちきりん:なるほど。橋下さんの大阪都構想は、変革を現実的にするための方策という意味合いもあるわけですね。

 全く新しい“理想的な”行政システムをイチから設計するとあまりに時間がかかって結局、実現しなくなってしまう。それでは意味がないので、とりあえず現実に存在していて、かつ、大阪のシステムよりはマシな東京都をモデルに、まずは話を前に一歩進めていくという手法を採用したいということですね。

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