4分の1に縮小したジグソーパズル市場、老舗のサバイバル戦略は?嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(2/4 ページ)

» 2012年02月03日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

ジグソーパズル業界のパラダイム転換

 1970年代に日本でも普及し始めたジグソーパズル。任天堂が1980年に発売した携帯型液晶ゲーム機「ゲーム&ウオッチ」と同じ流通に乗せて販売し、当初は売り上げが毎年倍々ペースで増えていったという。

 テレビドラマ『離婚ともだち』(1980年)で主演の大原麗子さんがジグソーパズルをしたり、巨人の王貞治選手が集中力の鍛錬に良いとジグソーパズルをしていることがスポーツ紙などで報道されたりしたことで人気が上昇、ジグソーパズルブームが到来した。週休2日制の広まりで、家でできる趣味として注目されたことも影響したという。

 しかし、1990年代半ばから「遊びの多様化」(矢野さん)で市場規模は縮小。また、購入者は男性(30〜35%)より女性(65〜70%)の方が多いのだが、男女雇用機会均等法の影響で女性の社会進出が進み、専業主婦が減ったことも一因と矢野さんは分析する。

 市場が最盛期の4分の1となる中、絵柄にこだわる業界の方向性に危機感を抱いた矢野さん。知的娯楽としてのジグソーパズルの伝統に立脚した、斬新な切り口のジグソーパズルを開発することで自社の生き残りを図っている。

 そのエース格とも言える商品が、「ジグソーパズルは平面上のもの」という旧来の思考の枠組みを打ち破った世界初の「3D球体パズル」。水星儀、金星儀、地球儀、月球儀、火星儀、木星儀、金星儀などの天体物が人気を呼び、最近はディズニーやサンリオ、わちふぃーるどなどのキャラクター物の「ビッグフェイスシリーズ」も出ている。

 2003年の発売以来、特に地球儀は7500円の540ピースと3300円の240ピースを合わせて、累計20万セット以上を販売し、今や、やのまんの屋台骨を支えるまでになっている。

3D球体パズル。人気キャラクターのビッグフェイスシリーズ(左、中央)と天体物(右)

 こうした「世界初」「日本初」という試みは、今に始まったことではなく、先代以来の同社の伝統であると矢野さんは言う。

 確かに、日本で初めてジグソーパズル製造工場を作って、国産ジグソーパズルを開発・生産したのは同社だし、ユーザーがピースを紛失した際にそれを提供するサービスを開始したのも、国内ではやのまんが最初だ。また、完成品をインテリアとして飾る日本人ならではの嗜好に合わせて、世界で初めてジグソーパズル専用額縁を開発・生産したのも同社である。

 そして、とりわけ注目されるのは、矢野さんが事業を継承してから開発した商品群だろう。既述の3D球体パズルは世界初だし、日本の住宅事情にフィットするということで昨今人気の同社「プチシリーズ」では世界最小ピースの商品を出している。さらに、最近発売した「4D City Scape TIME PUZZLE」は、東京を始めとする都市の歴史を3層構造の立体地図パズルを通じて体感できるというもので、我が国では初の試みである。

タバコの箱と同じくらいの大きさの「プチシリーズ」(左)、上下2層のパズルを組み立てた後、建物を加えていくことで都市の発展を体感できる「4D City Scape TIME PUZZLE」(右)

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