よく「実力次第」と言いますが、これから大事になるのは、「一定のプレッシャー下で、どの程度その実力を発揮できるか」ということです。それは「実力」×「プレッシャー耐性」の掛け算で算定されます。実力のある人でも、プレッシャーに弱い人は成果が出せなくなるのです。
「周りがみんな良い人で、和気あいあいと助け合って、締め切りまで余裕があって、首になる可能性はほとんどないような環境であれば、私はすごくいい仕事ができます!」などということは、ほとんど無意味になります。
「実力100×プレッシャー耐性20の人」より、「実力50×プレッシャー耐性60の人」の方が高い成果が出せる時代になるのです。
昔は、期待されていてもオリンピックになるとプレッシャーに負けて結果を残せない日本人選手がたくさんいました。でも最近は日本人選手でも、プレッシャー耐性が非常に高い選手が増えています。
ちきりんは「日本人が自然とプレッシャーに強くなった」とは思いません。そうではなく、コーチや本人たちが「大きな大会で勝つためには、プレッシャーをマネッジすることが重要」と気が付き、そのための訓練を始めたのでしょう。今やプロアスリートの世界では、メンタルな力がフィジカルや技と同等以上に重要だということは、十分に理解されているはずです。
そして、そういう認識と訓練が、今や一般の人生を送る人にも必要になりつつあるのです。これまでは、オリンピック選手や、自分で選んで外資系企業に転職する人だけに必要だった「プレッシャー耐性」が、ごく普通の人にも必要になりつつあります。
プレッシャーとは何で、そういう時、自分は何を感じ、どんな気持ちになるのか。それを避けるため、乗り越えるため、気持ちをどのように保てばよいのか。そういったことについて何の知識も訓練もないまま、高いプレッシャーの世界に放り込まれる人たちは本当に大変です。
米国では、かかりつけのカウンセラーや精神科医がいるビジネスパーソンは珍しくありません。彼らもまたプロの手を借りて、プレッシャーをさばく支援をしてもらっているのです。職場うつが増加しつつある日本でも、こういったサポート体制の必要性はますます高まることでしょう。
そんじゃーね。
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。
現在、前横浜市長の中田宏さんとの対談「ちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か」が連載中です。
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