――河野さんは自民党内部にいながら、核燃料サイクルの問題について「これでいいのか」と訴えてこられた。原発事故が起きる前の報道について、どのように感じていましたか?
河野:青森県六ヶ所村の再処理工場を試験的に動かすかどうかというときに、経済産業省の若手官僚が19兆円の請求書を作ってきた。私は「これは止めなければいけない」と思い、多くのメディアに声をかけたが、ほとんど取り上げてもらえなかった。
某テレビ局がこの問題について、特集を組んで報じることになった。しかし電力会社がスポンサーを降りると言ってきたので、特集の後半部分が報じられないことがあった。また某ラジオ局は「時間をあげますので、河野さん好きにしゃべってください」と言ってくれた。本当に大丈夫? と思いながらもしゃべり続けたところ、番組担当者のクビが飛びかけてしまった。さらに芸能人がこの問題について何か言おうとしたら、テレビ界から追放されるということもあった。こうした事例はたくさんあるのだ。
まずマスコミはやらなければいけないことがあると思っている。なぜ3.11まで、核燃料サイクルの問題について報道してこなかったのか。誰がどういう経緯で止めていたのか。自ら調べて、発表しなければいけないと思う。
朝日新聞青森支局の記者が「(六ヶ所村の問題について)書きますから」と言ってくれた。しかし電話がかかってきて「本社に“栄転”になったので、書くことができなくなりました」ということもあった(苦笑)。
その後、何年かして朝日新聞の青森版に再処理の話が掲載され始めた。その記事を見て「やればできるじゃないか」と思ったが、しかし3.11までは「事故があれば報道する。でも核燃料サイクルがどうつながっているのか」という問題については、ほとんど報道されなかった。
多くのメディアは、電力会社からの広告宣伝費は“汚れている金だ”という認識があったと思う。しかしその汚れたお金に、メディアは手を伸ばしてしまった。自民党も、電力会社からたくさんの政治献金をもらっている。そのことを報道してもらってもいいのだが、ではマスコミ各社はいくらもらってきたのか――。このことについても、報道すべきだ。
3.11以降、電力会社またはその関連業界からの広告宣伝をメディアは自粛しなければいけない、と思っている。しかし、テレビ局の関係者からこのような話を聞いた。「テレビ局はローカルのニュース枠を、地域の電力会社に買ってもらっている。なので東京のキー局もあまり批判できないんです」と。こうしたことでは、メディアの自浄能力が疑われるのではないだろうか。
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