“依存”ではなく“自立”を、ケニアのエイズ孤児を救うために世界一周サムライバックパッカープロジェクト(1/4 ページ)

» 2012年02月28日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

太田英基(おおた・ひでき)

世界一周中のバックパッカー。2月23日現在、タイ滞在中。1年半で40カ国以上の訪問を予定。若者の外向き志向の底上げのため、海外で働く日本人を訪問したり、旅の中で気付いたことや発見したことをWeb中心に情報発信しながら旅をしている(サムライバックパッカープロジェクト)。学生時代に広告サービス「タダコピ」を立ち上げた元起業家でもあり、根っからの企画屋。Twitterアカウント「@mohideki」では旅の様子をリアルタイムに発信している。

 →目指せ世界一周!「サムライバックパッカープロジェクト」とは?


 アフリカの中央でインド洋に面する国、ケニア。ケニアというと、みなさんは何を思い浮かべますか?

 ライオン、シマウマ、キリンなどの動物が元気に走り回る大草原? 昔ながらの伝統的な生活をしているとされるマサイ族? 世界有数の治安が良くないと評される首都ナイロビのダウンタウン? 多くの経済的に豊かではない人たちが住まう巨大スラム街? 紅茶やナッツ? これらはすべて正解。このすべてがケニアの一部です。

 僕はケニアに強い興味を持って訪れました。アフリカの中でもさまざまな面で発展しているという噂を聞いていたからです。モロッコ・エジプトの後に訪れたのですが、社会の中心を黒人が占める、いわゆるブラックアフリカの国はケニアが初めてでした。

 そのケニアの地方都市キスムで活動している日本人の女性がいるということで、突撃訪問してきました。それはエイズ孤児支援NGO「PLAS(プラス)」の谷澤明日香さん。今回は、素敵な笑顔で僕を歓迎してくれた彼女をご紹介します。

左が谷澤さん

エイズ孤児1660万人の9割がサハラ以南のアフリカに

――自己紹介とこれまでの歩みについて教えてください。

谷澤 1982年、神奈川県横浜市出身。大学在籍中の2005年にエイズ孤児支援NGO・PLASを設立。途中、ケニアで活動する他NGOでのインターンを経て、2007年からPLASの海外事業担当ともなり、2008年から現在までケニアに駐在しています。

 団体設立当初は無給で活動していたので、有給になるまでの数年間は派遣社員などをして仕事の片手間に活動していました。

――PLASの活動内容と、エイズ孤児を取り巻く環境について教えてください。

谷澤 エイズ孤児支援NGO・PLASは、片親、または両親をエイズで失った18歳未満のエイズ孤児の子どもたちが直面する問題の改善に取り組む団体です。

 現在、世界では約3400万人の人がHIVに感染しており、そのうち年間およそ200万人がエイズにより亡くなっています。

 親をエイズで亡くしたエイズ孤児は2009年の時点で全世界およそ1660万人と言われ、そのうち約9割がサハラ以南のアフリカに存在し、今も14秒に1人の割合で増え続けています。

 親を亡くしたエイズ孤児の多くは祖父母や親戚に引き取られますが、祖父母が高齢で働けない場合は子どもたちが家族を支えていかなければならなかったり、親戚に引き取られても、すでにいる子どもたちの中で低い優先順位に置かれてしまい、ほかの子どもと同じ機会に恵まれることができなかったりと、さまざまな困難を抱えています。

 このような状況の中、私たちは地域の中で子どもたちが育つことが大切だと考えており、地域の大人たちがエイズ孤児を支えていけるようバックアップしていく活動を行っています。

 子どもたちを取り巻く環境を変えられるのは、よそ者である私たちではなく地域の大人たちです。そのため私たちは孤児院の運営や子どもの学費を直接サポートするような協力は行わず、地域の大人たちが持っているリソースを生かして一緒に問題の解決に取り組みます。

 その際に注意しているのは、外部支援への依存心を生まないよう、彼らにできることはなるべく彼らの手に委ねることです。

 これまでに、エイズ孤児が多く通う小学校の教育環境改善のための教室建設事業や、学校の農園で作物を育てその収穫から学校に通うエイズ孤児の学用品支援を行う農業支援事業、そしてお母さんから赤ちゃんへのHIV感染を予防するための母子感染予防啓発事業などを実施してきました。

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