「新聞は分かりにくい」……そう感じている人にオススメの新聞相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年03月08日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 読者は1日、どの程度の時間をかけて新聞を読んでいるのだろうか。テレビのニュースだけで十分、あるいは各種ポータルサイトに表示される主要見出しだけ、などという読者は少なくないはず。

 大手紙の購読数が漸減傾向をたどる中、今回は筆者お勧めの新聞媒体を紹介する。朝日新聞社や毎日新聞社、読売新聞社が子供向けに発刊している「小学生新聞」だ。子供向けと侮るなかれ。これ、子供向けだけではもったいない内容が含まれているのだ。

「マスメ記事」を書くのは難しい

 筆者が通信社に勤務していた頃、主に2つのチャンネル向けに記事を執筆していた。1つは、金融機関で巨額資金を動かすディーラーや証券会社のトレーダー向けに書く「専門情報記事」。

 もう1つは、地方紙やテレビ向けに書く「マスメ記事」と呼ばれる一般読者用だ。どちらの記事を書くのが難しいだろうか。

 大方の読者は「専門情報」と答えるのではないだろうか。しかし、正解は「マスメ記事」のほうで、遥かに難易度が高いのだ。

 専門情報は、読み手の対象があらかじめ絞り込まれている。例えば、為替ディーラー向けに書く記事は、外為の仕組みや円高に振れた際の日本経済への影響など、読み手が既に分かっている。なので「誰が買って、誰が売ったか」「政府はどのように感じているのか」など、プロが知りたいファクトだけを書けば良いのだ。もちろん、専門用語の解説など不要であり、記事中に専門用語を一言で解説する「枕詞」を入れる必要もないのだ。

 一方、マスメ記事、すなわち一般読者向けはどうか。筆者の古巣の場合、「主婦や中学生にも理解できるように書け」という基準があった。

 経済部の取材ではしばしばこの基準をめぐり、デスクとやり合った経験がある。例えば、「ヘッジファンド」という言葉だ。先の専門情報記事ならば、ヘッジファンドという言葉に説明はいらない。だが、一般用だと事情が違ってくるのだ。

 「世界の主要市場で投機的な売買を繰り返す専門集団」「顧客から集めた資金を元手に株式や外為で高度な金融技術を駆使する投資家」などと、記事中に多数の枕詞を要することになるわけだ。

 加えて、一般読者用の記事は、35行、45行など極めて短い分量で原稿を仕上げねばならず、若手記者は四苦八苦しながら、あるいは先輩記者に頭を小突かれながら半べそで原稿を仕上げることになる。

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