出社初日のもうひとつのハイライトは、新しく支給されるコンピュータの接続を誰も手伝ってくれないことだ。アップルに雇われるほど優秀で技術通なら、社内ネットワークへの接続ぐらい自分でできるだろうというわけだ。
「たいていの人間はサーバとの接続ができると思われている」。あるアップル・ウォッチャーは言った。「みんな“あれは本当にむずかしかった。でも誰に聞けばいいか分かったからね”と言う。じつに賢いやり方だ。そうやってまわりの人とつながりができるんだから」
アップルは新入社員に骨を1本投げてやる。所属チーム外の同僚をひとり紹介する、非公式の「iBuddy」システムだ。新入社員が戸惑っても、この同僚に質問すれば相談に乗ってくれる。ただ多くの社員は、在職中にiBuddyと会ったのは初期の1、2回だけだと言う。すぐに仕事が忙しくなって会えなくなってしまうのだ。
オリエンテーションでは、セキュリティの説明というかたちで現実が突きつけられる。アップルに勤めた者は決してそのときのことを忘れない。「恐怖による沈黙」とでも呼ぶべきだろうか。アップルの前にナイキとノキアで働いた、iPhoneのマーケティング担当幹部のボーチャーズは、当時の場面を思い出す。
「誰だか知らないがセキュリティ担当のトップが入ってきて言う。“オーケイ、この会社で秘密とセキュリティがきわめて重要だということは、みんな分かってますね。その理由を説明しましょう”。理由とは、アップルがある製品を発売する際に、直前まで秘密のベールに包まれていれば、とてつもなく価値の高い報道や取材や評判が生まれるということです。“金額にすれば何百ドルにもなる”と彼女が言ったのを憶えている。“だから誤解の余地はありません。意図的にしろ、そうでなかったにしろ、アップルの秘密を外にもらしたら罰則は決まっています──即時解雇”」 (翻訳:依田卓巳)
(続く)
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