川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
研修会社をやっていて、非常によく聞かれる質問の1つに「これだけ景気が悪いと、研修をする企業も減っているんですか?」というものがある。「収益が上がらない中で、企業が経費削減に走ると、研修費もその対象になりますよね」という趣旨の質問だ。経費削減と言えば、交際費や広告費がその対象となるのはよく知られているが、さて研修費は実際にどのようになっているのだろうか。
産労総合研究所が、毎年発表している「教育研修費用の実態調査」によると、企業が従業員1人当たりにかける教育研修費用は、2008年から2010年まで、4万3524円→3万4633円→4万354円と推移している。
景気が良かった時はどうだったかというと、同じ調査で最も研修費が多かった1991年(バブルの最終年)が4万3217円。増減はあるものの、1987年に初めて3万円を超えてからは、2010年まで3万円台の半ば〜4万円台の前半で推移している。
意外に思う方も多いかもしれないが、研修費は景気によってそう大きく増減しない、経費削減の対象には入りにくい費用と言えそうだ。私もリーマンショックの際は、さすがに研修の仕事が相当落ち込むのでは……と内心ヒヤヒヤしていたが、そうでもなかったのが現実。
ほとんどの研修は、今期の業績のためにやるのではなく、人材育成や組織の活性化といった先々の成長のために実施するもので、“削減可能な費用”というよりは“欠いてはいけない投資”という見方が多いのかもしれない。
「1人3〜4万円は安い」と言う経営者もいる。「月30万円の給与を払うと、会社負担の社会保険料として毎月4万円超を収めないといけないが、その程度の額だ」と言う。また、社員旅行をすれば1回で1人3〜4万円はかかるし、社員旅行を嫌がる人も増えたので、それならそれを研修に使おうという社長もいる。ほかにも、好決算が見えてきて、税金で持っていかれるより何かに使いたいと考え、お金で配分して終わりにするより、気になっていた組織面の問題解決をと研修に費やした社長もいた。
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング