ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「中国人観光客が大挙して押し寄せたせいで、京都のホテル代が高騰し、観光地が荒らされてめちゃくちゃだ」
「中国人は日本文化や日本人へのリスペクトがないので、その辺でゴミのポイ捨てはするわ、人の家に勝手に入ってくるわで、どうにかしてほしい」
日本を代表する観光地・京都の激しい混雑や、観光客のマナーの悪さが問題になるたび、ネットやSNSでは「中国人観光客」を犯人扱いする声が多く見られた。そうした見方が広がったため、日中間の政治的対立が起きるたびに、「中国人は日本から出ていけ」「国交断絶でお願いします」というような一部の人たちの過激な主張につながってきたのは、周知の事実だ。
しかし、高市早苗首相の「台湾有事」をめぐる発言をきっかけに日中関係が悪化し、中国人観光客が大幅に減少すると、われわれの「中国人観光客」に対する認識がイデオロギーによってゴリゴリに偏っていたことが明らかになる。
コロナ禍の訪日観光客激減などのデータを基に、中国人観光客の減少について分析した、京都市観光協会のDMO企画・マーケティング統括官の堀江卓矢さんは 『AERA』(朝日新聞出版)の取材にこう述べている。
「中国人観光客の減少が京都の外国人観光客全体の増減に与えた影響を計算してみると、わずか数パーセントの減少にとどまることがわかりました。実は、もともと京都を訪れる中国人観光客はそれほど多くなかったのです」(AERA DIGITAL 2026年6月14日)
つまり、京都の人々が「あいつらが来なければ」と批判的な目を向けていた相手は、台湾、韓国、東南アジアからの観光客、あるいは中国人観光客と誤解されるような振る舞いをする一部の日本人観光客だった可能性もあるのだ。
こうした「誤解」は世界各地で起きている。数年前、米国で「中国排斥」のムードが高まって、街中で中国系住民が暴行されるなどの被害が起きた際、日本人も「このチャイナめ」といきなり殴られる被害があった。われわれが街中で白人を見かけても国籍までは分からないように、東アジア系の人々の中から「中国人」だけを見分けることも難しい。
では、なぜわれわれは京都の混雑を、実際にはそれほど多くなかった「中国人観光客」と安易に結び付けてしまったのか。筆者は、「脅威に感じるほど多くの人が訪れ、羽振りもいいため鼻につく」という感情が影響している面も大きいと考えている。
なぜかというと、われわれ日本人も同じような理由で、さまざまな国で“犯人扱い”された過去があるからだ。
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