1987年、日本人観光客は『TIME』誌で「世界の観光地を荒らすニュー・バーバリアンたち」と酷評された。ローマ元老院議場の大理石の床を記念に削ったり、教会でミサ中の人々にフラッシュを浴びせたり、現地の人々が大切にしている聖地にズカズカ入って、ゴミのポイ捨てなど、マナーの悪さが問題視された。
マナーが悪いのは日本人だけではないにもかかわらず、なぜこんな狙い撃ちをされるのかというと、「脅威に感じるほど多く訪れ、羽振りもいいため鼻につく」と受け止められたからだ。
当時、メイド・イン・ジャパンが世界を席巻、円高を背景に日本人は世界中の観光地へ押し寄せて、高級ブランドを「爆買い」した。現在、中国に向けられることがあるような否定的な感情を、当時の西側諸国の一部も日本に向けていたのである。
このように、異なる文化や価値観を持つ人々を「客」として受け入れるインバウンドでは「嫌われ者」をスケープゴートにしてしまう傾向がある。裏を返せば、「中国人観光客のせいだ」「外国人観光客がたくさんやってくるのが悪い」と騒いでいるうちは、京都の問題は何も解決できないということだ。
では、何が必要かというと「アンバランス・ツーリズム」の視点である。
アンバランス・ツーリズムとは、観光需要と受け入れ側の供給のバランスが崩れた状態を指し、単に観光客がキャパを超えて押しかけているという「オーバーツーリズム」に代わる概念として欧州で提唱されている。分かりやすいのは、欧州旅行代理店・ツアーオペレーター協会(ECTAA)のフランク・オースダム会長が述べた言葉だ。
「オーバーツーリズムという表現は、問題を単純化しすぎている。私はバランスの取れた観光(Balanced Tourism)、あるいはバランスを欠いた観光(Unbalanced Tourism)について議論したい」
京都が混雑しているのは中国人観光客のせいだ、というのは「問題の単純化」の最たるものだ。データが示すように、実際には中国人観光客はそれほど京都を訪れていない。日本人も含めて、さまざまな国・地域からの観光客が集中して訪れている。そして、文化財や史跡が豊富な奈良や和歌山など周辺地域へ十分に誘客できず、京都だけが大混雑してしまうなど複数の要因が複雑に絡み合った結果だ。
つまり、京都の混雑というのは、オーバーツーリズムではなく、アンバランス・ツーリズムがもたらした結果といえる。
なぜ大阪と浅草でニュースが“逆”になるのか 中国人観光客報道の舞台裏
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
「日中関係の悪化」で仕事はどうなる? 900万人が不安を感じる“もしも”の話
東横インの「47都道府県バッジ」が人気 富士山は静岡か山梨か、小さな争奪戦Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング