MBAの時代は終わった!? “事業構想力”で日本のビジネスを元気に嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(3/4 ページ)

» 2012年04月20日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

ビジネス・シーズをイノベーティブな製品・サービスに転換させる教育とは?

 この事業構想大学院大学でビジネス・シーズの発見と並んで重要なのが、そのシーズをイノベーティブな製品・サービスへと転換していくための戦略、システム/プロセス、組織を構築できるよう支援することである。

 そのために、事業構想基礎科目(1.事業構想の本質的理解、2.経済・社会環境変化と事業構想、3、構想力と技法)→事業構想専門科目(4.経営知識と基礎強化、5.組織と人材)→事業構想展開科目(6.事業の展開、7.マーケティングとコミュニケーション展開)→演習・指導という独自の履修課程を設け、10人の教授陣が院生の指導に当たっている。

 しかし、一般に高度な理論と経営実践の現場との間には、大きな落差が存在する。特に、現代日本のような厳しい経済環境の中で、日々、経営に追われている人は、どうしても目の前のことでいっぱいいっぱいになりやすく、いきおい視野も限定され、かつ近距離的なモノの見方になりやすい。そのため、高度な理論を、自分の側に引き寄せ、当事者意識を持って考えることが得意でない人も多い。

 ビジネスマン教育特有の、この隘路(あいろ)を突破するために、東さんは各専門科目の教授陣による講義+議論に加えて、その場に各分野の現場で活躍するトップランナーと称すべき人々をゲスト(客員教授)として迎え、理論と最先端の現場実践の融合を図っている。

 「哲学者、芸術家、ジャーナリスト、ブランドマネージャー、建築家、創業経営者、社会起業家……など、招聘している方々の分野は多岐にわたります」

こうしたサロンでの交流が重要なのだという

 ただ、ここで注意しなければいけないのは、ここでの教育プロセスには知識注入以上に重要なことが存在するということだ。

 それは院生ひとりひとりが在学中に、“絶えざる自己革新”のマインドを身に付けることだ。事業構想大学院大学を無事卒業したとしても、その後の数十年に及ぶビジネス・ライフを成功裏に乗り切っていくためには、この大学で学んだ専門知識もさることながら、むしろそれ以上に「たとえ何十年経とうが、日々、自己革新を図っていく」姿勢こそが大事だろう。

 どんなに厳しい経営環境であっても、それを乗り越え自社を成功へと導く経営者は、決まって「今日の延長上に明日は来ない」、あるいは「今日の成功は明日の失敗の種を宿す」と主張するが、この大学で重視しているのは、まさにこのマインドの習得である。 

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