尖閣諸島騒動の裏で、「かつお節工場」が狙われている窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年04月24日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

人民解放軍が上陸して「掘ったて小屋」を建てる?

 下の写真をご覧になっていただければ分かると思うが、場所によっては原型をとどめていないほど崩れてしまっている。

「かつお節工場」は台風や強い風のせいで、原型をとどめていないほど崩れている(出典:仲間均石垣市議)

 この惨状を目にして思わず「中国人の活動家が壊したんですか?」と尋ねたが、仲間市議によると、台風や強い海風のせいだという。

 なんにせよ、あれから4年の月日が流れ、崩壊はさらにすすんでいるはずだ。

 なんて話を聞くと、「たかが古くさい石垣が壊れてるぐらいじゃねえか」と思うかもしれないが、実はこの「かつお節工場」こそが、中国からの「防波堤」になるのだ。

 尖閣諸島の海域は波がかなり高い。それを言い訳に、あのあたりで領海侵犯している中国籍や台湾籍の漁船が、「乗員の安全のため緊急避難したい」と上陸する恐れがある。

 それは裏を返せば、「自称漁民」の人民解放軍が上陸して、しれっとした顔で「掘ったて小屋」を建てることもできるということだ。

 もしそんな事態になったら、都が所有しているとか、歴史的にうんたらと訴えても意味はない。例えば、かつて福建省の漁民が尖閣諸島付近で遭難し、魚釣島の漁民たちが救助した時、中国政府が「沖縄県八重山郡尖閣列島」と明記して感謝状を送った「史実」もあるが、中国側は無視している。

 こうなると競売物件に居座るヤクザと同じで、漫画『カバチタレ』の世界でいえば「占有事実」がカギとなる。つまり、ここでは200人以上の日本人が暮らしていた住居跡や「かつお節工場」だ。上陸した「自称・漁民」は真っ先にこれを破壊するはずだ。

 だから、そうなる前に一刻も早く文化財なりに指定して修復をし、きっちりと保存をする。今のままでは、破壊して「台風のせいだろ」とトボけられても我々には確認しようがない。

 そんなの考え過ぎだ、と呆れるかもしれないが、現実に「かつお節工場」がなかったばっかりに、自国に「掘ったて小屋」を建てられた人々がいる。

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