尖閣諸島騒動の裏で、「かつお節工場」が狙われている窪田順生の時事日想(3/3 ページ)

» 2012年04月24日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
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「世界一幸せな国」を襲った不幸な侵略

 「世界一幸せな国」として知られるブータンと、中国(チベット自治区)と接するあたりは、山奥でほとんど人がおらず、漢方でおなじみの冬虫夏草(とうちゅうかそう、ふゆむしなつくさ)がとれ、ヤクの放牧にも適していた。要するに、尖閣諸島と同じく「豊富な資源」の眠るところだった。

 そこへある時、人民解放軍がひょいと領土をまたいで、しれっとした顔で「掘ったて小屋」を建てた。抗議すると、中国は「おまえらの領土だって証拠はどこにある?」とばかりに新しい地図をつくって、こう言い放った。

 「絶対に譲れない」――。

 結果、ブータン国土は約4万6500キロ平方メートルからおおよそ2割減の約3万8400キロ平方メートルになった。今も交渉中だが相手が悪い。もう取られたと思った方がいい。

 国土を奪われるというのは、国家元首にとっては身体を切り刻まれるよう苦痛である。そんな心労がたたったブータン国王夫妻を、日本のマスコミは嫌味のように「世界一の幸せ者」とヨイショ攻めにした。なかでも際立っていたのが『朝日新聞』で、わざわざ今年の正月の社説で「ひとつの未来をみいだした」として、日本人はブータンを見習うべきだと綴っていた。

 その『朝日新聞』が都知事の「尖閣諸島買取」に対して「無責任だ」と批判し、尖閣諸島問題は放っておけ、「日中両国民がお互いに批判しあって、何か得るものがあるのか」と言いだした。

 大方、「尖閣諸島を奪われたって、幸せが得られればいいじゃないか」などと言いたいのだろうが、あいにく日本人はそこまでブータンに憧れていない。

 ちなみに朝日新聞といえば、文化財に助成をする財団ももつ。どうすれば「かつお節工場」を文化財にできるかを説いてくれた方が、よほどためになる。

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