藤森 ここまで製品のサイクルから見た業界の位置付けを説明しましたが、もう1つ、経営のあり方という観点からソニーを見てみたいと思います。ご紹介したいのはキャッシュ化速度※というコンセプトです。
フリーキャッシュフローは「税引後営業利益+減価償却費等−設備投資−運転資本の増減」と定義されます。次図はフリー・キャッシュフローを代弁させるために、横軸に投資効率(ROC)、縦軸にキャッシュ化速度(運転資本の増減)を置いて、各企業を表現したものです。
フリーキャッシュフローが長期的に改善することは株主にとっても会社にとってもいいことなのですが、ROCが改善するかどうかということは割と短期的な動きだと思うんですね。例えば、人員削減をするとそれが利益に変わる、あるいは設備を廃棄すると償却費が利益に変わるというのは一時的なことであって、継続的、持続的な改革にはなりません(ROCは改善するが、キャッシュ化速度は改善しない)。
アップルの推移に注目すると、もともと今の日本の会社よりキャッシュ化速度は遅かったのですが、1997年以降、劇的に改善しています
次図はアップルのキャッシュ化速度の構成要素を3つ(売上債権回転日数、在庫回転日数、買入債務回転日数)に分解したものです。アップルは、2001年にiPodを出す前に会社の構造を変えていたことが分かるかと思います。
ですので、ソニーにとって画期的な商品が必要という話はすごく大事なのですが、私はその前に事業プロセスの改善がないと、なかなか大型商品は出せないのではないかと考えています。
最後に次図がソニーのキャッシュ化速度を四半期ごとの推移でみたものです。2008年から少し改善傾向がみえていたのですが、この1年間で少し足踏み状態になりました。これが上に行くのか、下がっていくのか、ここが新経営陣が本当にソニーを良くできるかどうかの1つの試金石になるのではないかと思います。
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