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» 2012年04月25日 11時30分 公開

ソニー新経営陣が解決しなければならない構造的問題とは(5/5 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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「One Sony」ではなく「All Sony」で

――ソニーの映像技術はコスト削減によって競争力が弱まったと思いますが、どのような商品で映像技術は生かされるのでしょうか。

藤森 すごく感じるところはありまして、立石氏の本の中にもありますが、やっぱりコスト削減のために映像技術を捨てた時代が、自分が見ていてもソニーが凋落していく顕著な状態だと思いました。

 どういう商品で映像商品を生かしていけるかというところですが、テレビなのかモバイルなのかで違ってくるとは思いますが、デジタル処理の技術やカメラの技術といった映像技術はソニーのコアビジネスだと思います。

――一お二方が経営者を評価する際、どういったところをご覧になっているのでしょううか。その上で、平井新社長をどのように評価していますか。

藤森 私は「会社を良くするために強烈に愚直に働く人かどうか」だと思うんですね。決して何か新しい商品を生み出すとか、それだけではないと思いますし、大きな会社を管理運営する上で、1人のマネジメントが具体的に何かの商品を出すというのはないと思いますので、仕組みをきっちり作って、それを運営するということに尽きるかなと思います。

 そういう意味で、今の平井氏の印象はやらないといけないと分かったことはきっちりやるというマネジメントだと思います。例えば、サムスンとの液晶パネルのジョイントベンチャー(S-LCD)を解消したわけですが、思った以上のスピードでやりましたよね。「これはやらないといけない」と分かった時、そこに向かって愚直にやるという意味では今までのマネジメントとは違うと思います。

 ただ、何が正しいのかという価値判断が平井氏の中にどこまであるかが、また良く分かりません。それが先ほど立石さんがおっしゃったような、どういうブレーンがつくかということに関係するのかもしれませんが、やらないといけないことを一生懸命やるという意味では期待できるところがあると思います。

立石 私は経営者に最も必要なものはまずビジョンだと思います。次は貫く意思ですが、経営者をどこで評価するかというと結果です。この人はどう考えたとか、どうしたとかは関係ありません。どういうことをやったかだけです。地獄への道も善意で敷き詰められていることがあります。いくら善意であっても地獄に連れて行ったらダメだということです。

 平井氏の最大の問題は「One Sony」と言っていることだと思います。One Sonyということは、(今は)バラバラだということです。今のソニーが復活するために大切なのはOne Sonyではなくて、「All Sony」だと思います。現役の社員、幹部、OB、株主、あらゆる人の力を借りてソニーを立て直すんだという力にすることが大事で、1つになったら何とかなるみたいな甘いことを言っていると困るというのが僕の意見です。彼はスローガンがいるからそういう風に言っているだけでしょうが、僕はAll Sonyでいってほしいですね。

経営方針説明会より(出典:ソニー)

――アップルはつい最近までスティーブ・ジョブズという創業者がイノベーターとして率いてきた会社ということで非常に分かりやすかったのですが、サムスンは決してそうではありません。しかし、日本の電機メーカーより元気がいいのはなぜですか。

藤森 私は、サムスンは見えることをきっちりやる印象があります。例えば、投資意思決定にしてもボトムアップでいろんな調査をして、経済的に計算が合うなら思いっきりやりますよね。そこが強みであって、そういう意味ではパナソニックに近い会社なのかなと。

 逆に言うと、経済計算に合わないようなものが突然出てくるとか、何十年も研究開発をやった結果こういうものが生まれましたということができない会社だと思います。ソニーはそういう意味ではサムスンと違う戦い方をやらないといけないのかなと思っています

――電機メーカーの経営に当たっては、垂直統合と水平統合のどちらがいいのでしょうか。

藤森 やはり最終製品を自分でコントロールできる会社、バーティカルな方(垂直統合)が強いと思うんですね。日本の会社も需要初期の段階では最終製品を作るためにデバイスを作るという流れですが、あるところから最終製品が吸収できる以上のデバイスを作れるようになってしまうというのがパナソニックやシャープだったと思っています。そういう意味で最終製品が強ければ、垂直統合でやった方がメリットがあるのではないかと思います。

 サムスンの半導体事業では、今まではDRAMやNANDフラッシュといったコモディティ中心でした。それがシステムLSIの設備投資を増やしてきて、恐らく今年システムLSIの利益がコモディティの利益を抜くと思うんですね。そういう意味ではスマートフォンとその次のPCのタブレット化というところで、システムLSIの特許が次の柱になって、最終製品で差別化していくということが十分考えられます。

――ハードウエアの性能でどこまで差別化できるものなのでしょうか。

藤森 先ほど(普及率)30%のジンクスを説明させていただきましたが、あと2年くらいはハードで稼げるのではないかと思います。それはまだスマートフォンの普及率が低いからです。

 ソニーは、そうはいってもいろんな技術を持っていると思うんですね。今、世界でいちばん薄いスマートフォンはあまりみなさん知らないのですがソニー製ですよね。そういうディスプレイの技術、画像処理の技術、カメラの技術といろんな差別化要素がまだあるとは思います。

 ただ、その後どうするかというと、ここもコモディティの世界になってきます。PCの次のサイクルとか、テレビがまた変わってくるかもしれませんので、そこでまた同じような波に乗れるかどうか。エレクトロニクスは変化が激しいので、サステナブルに稼ぐことは難しいビジネスだと思います。

――サムスンの名前が出ましたが、今、ソニーやパナソニック、シャープの競争相手はむしろビジオとか、ベストバイのプライベートブランドを作っているEMSだと思います。そういうメーカーの商品が出ているコストコやターゲットなど(米国の小売業者)で、日本商品はありません。コモディティだから相手にしないんだといえばそれまでですが、マーケットシェアを取ろうと思えばそういうところにも出ていかないと思うのですがいかがでしょうか。

立石 北米市場に関して言いますと、僕は米国のソニーはもともと量的拡大が得意な会社とは思っていません。だから僕はむしろそういうところでもハイエンドを狙って出したらいいのであって、ボリュームゾーンを出していくのは無理だと思います。

 ボリュームゾーンに強いのは、やはりパナソニックだと思いますね。パナソニックは北米でプラズマテレビにこだわったのが問題で、液晶テレビを早く投入していればもうちょっと違った展開になっていたのではないでしょうか。日本のメーカーでも持ち味があると思います。だから、北米での問題はパナソニックに尽きると思っています

藤森 販売会社のコスト構造が違うので、やはりローエンドとは戦えないんですね。ただ、面白いのはアップルは米国で3番目に大きい小売業者ですよね。ベストバイとウォルマートに次ぐ売り上げをあげている小売になったわけで、ソニーもその選択肢はあったと思いますし、これからもあるんじゃないかと思っています。

 先ほどキャッシュ化速度の図がありましたが、アップルは意図的に小売店に投資していて、確か2000年前後くらいですと、アップルもソニーも米国の小売店の数はほとんど同じくらいで、50〜60店だったと思います。今、アップルは200店以上展開していて、会社もどんどん垂直統合していく流れです。ソニーも自前の小売店をどううまく使っていくのかが1つカギになるかなと思っています。

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